研究課題/領域番号 |
21K02773
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
康 敏 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (60290425)
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研究分担者 |
大月 一弘 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (10185324)
柏木 治美 神戸大学, 大学教育推進機構, 教授 (60343349)
川村 晃市 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (80846593)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ライティング支援システム / CALL システム / Focus on Form / 語彙 / 言語形式への気づき |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、作文の産出過程に焦点をあて、自然言語処理技術を活用し、従来の作文産出後の添削方式と異なった個々の学習者の言語形式への気づきを高める新しいタイプの学習者適応型作文支援システムを開発し、実践的に評価を行うことである。システムには、学習者の言語形式への気づき(Focus on Form) を高める機能の実装により、正しい文法に繰り返し学習させ、文法上の誤りの軽減を図り、教師による添削労力の軽減および学習者の主体的に作文する能力の向上につながることを目標としている。言語形式への気づきは語彙の使い方への気づきと文法項目への気づきに分ける。学習者のライティング能力をレベル分けし、書く前の準備作業段階においても、書く過程においても、さらに教師による添削前の自己修正段階においても、語彙と文法の二つの側面からネイティブ表現に気づかせ、その習得および作文への活用を促す機能を開発する。 令和3年度では、語彙に焦点を当て研究を進めた。プロトタイプのライティング支援システムを開発した。システムには、予め用意したリーディングリソースから三単現動詞を自動的に視覚的に強調する機能を実装し、リーディングの際に注意を払わせる有効な手法を調べた。また、単語スペルへの気づきにおいては、未習得の単語の検索方法に着目して、スペル音声による検索とテキスト検索の相違によるスペルへの記憶効果を調査し、単語スペルへの気づきの手法を検討した。結果としては、学習者の単語スペルへの記憶効果はスペル音声による検索方法を用いた場合がテキスト検索方法を用いた場合より有意に上回っていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度では、予定していたライティング支援システム全体のプロトタイプのデザインや、語彙レベルでの気づきの手法の開発と実装を行っていた。単語スペルへの気づきの手法について学習者による評価を実施したが、実装したシステムを用いた評価はまだ進行中である。研究は全体においておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、文法項目に焦点を当て進めていく予定である。文法項目への気づきは、文の構造に注目して行う。センテンスを構文解析し、センテンスパターンに分類し、その分布を示することによって、文構造の細部及び文体の多様性に気づかせる。センテンスパターンは中学校で習得する基本的構文から大学レベルの構文まで分析し、構文解析器を利用してセンテンスがどの文型に属するかを自動分類できるように構築する。リーディングリソースで使用したセンテンスパターンの一覧を使用頻度の高い順に示し、テーマに関わる文章に使用する主な文体の把握を可能とする。ライティング授業で習得対象となる語彙と文法項目の指定は教師によって行うか教科書に基づいて予め自動生成する。 推敲を含めた書く過程では、学習者作文に同様のFonF モジュールを利用するが、語彙と文法項目をリーディングリソースで強調したものとの比較も行い、ネイティブ表現との違いにも気づかせ、文法上の誤りの軽減を図る。これらの研究成果をまとめ、発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
評価などのための謝金や学会参加のための参加費・旅費として使用する予定であったが、新型コロナウィルスの影響により、評価の一部や学会参加は取りやめたことによって次年度使用額が生じた。次年度でも引き続き評価や学会参加のための費用として使用することを計画している。
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