2023年度は画像などを用いて記述式コースウェアを作成する場合の基となる画像解析の新しい方法を提案した.具体的には,ものづくりのコースウェアでは工具が必要不可欠となる.電気分野と医療分野の工具を対象に,先端部が直型や曲型の形状による違いの特徴を示す評価パラメータを明らかにし,分野や種類が判別できれば,ものづくり教育における教材作成,用途に応じた使用法,新たな工具の開発において有用となる.また,評価パラメータによって,工具の手入れ具合や劣化に伴う交換時期が明らかにできれば,安全対策や管理においても有用となる. 本研究では,電気分野と医療分野で用いられている工具を対象に,形状はボックスカウンティング法を用い,色彩はセミバリオグラムを用いて,それぞれのフラクタル次元(DsとDc)を求めた.この結果,次の特徴が明らかとなった. (1)色彩のセミバリオグラムの最大値γmaxの値は,鋼色より絶縁樹脂のように有色だと大きい.また,先端部が曲型だとγmaxの一定の範囲が長い.この結果,セミバリオグラムから工具の種類が判別できた. (2)電気分野の工具は持手部に絶縁樹脂を有するため,Dcの値が小さい.一方,医療分野の工具は,形状が複雑で色彩が鋼色のためDsとDcの値が大きい.この結果,工具の「分野」が判別できた. (3)電気分野のピンセットと医療分野の鑷子は,同一分野の他の工具より単純なため,Dsの値が小さい.電気分野のDsの大きい順は,概してラジオペンチ>ペンチ>ニッパ>ピンセットであり,「種類」が判別できた. (4)工具の清掃前後では,形状のDsに変化は見られなかった.しかし,色彩はランダムな汚れから自然な色に変化するためDcの値は小さくなるので,「汚れ」が判別できた.
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