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2022 年度 実施状況報告書

母語活用型日英中三言語対照学習法と学習システムの開発研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K02803
研究機関東京都立大学

研究代表者

湯山 トミ子  東京都立大学, 人文科学研究科, 客員教授 (60230629)

研究分担者 神田 明延  東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (10234155)
藤本 かおる  武蔵野大学, グローバル学部, 准教授 (20781355)
篠塚 麻衣子  東京都立大学, 人文科学研究科, 客員研究員 (90782805)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード日英中三言語 / 多言語学習 / 対照言語学習 / 動的ランゲージング / ランゲージング / 統合的言語能力 / 学習者本位 / 自律的学習
研究実績の概要

本研究の目的は、日本語を母語とし英語学習歴のある初修初級中国語学習者の言語能力を活かし、中国語学習の発展と英語学習を補助できる日中英三言語対照学習システムを開発し、日中英を運用できる国際化人材の育成に寄与すると共に多言語教育の新たな展開を図ることにある。この目的を達成するため、本研究は学習者の言語能力を個別の言語の達成度として評価するだけでなく、言語学習歴「母語+外国語」により学習者に内在的、多層的に形成される統合的な言語能力に着目し、これをさらなる言語学習の推進力として、意識的、積極的に活用する学習法、及び紙媒体では煩雑で適正化が難しい三言語対照同時学習用ICT教材の実現法を検討し、これにより言語単位に分断されない学習者本位の新たな多言語学習形態の創出を目指している。
2022年度は、初年度の成果を基盤に①教材コンテンツの基本構想の再考、点検(発音と表現の学習の二部構成と主題の再検討)、②先行研究の少ない三言語対照学習法の理論構築の進化、発展、③対照言語学と語用論による学習教材(課題文、例文、解説)の検討、④教材データの作成を基にしたDBの基本構造の詳細検討、実現、⑤システムの基本となる表示機能のデータの属性、処理方式の再考、修正等を課題とし、ほぼ毎月一回定例研究会、隔週に開発仕様会議を開催し、研究開発を進めた。さらに外部意見の吸収による発展を目指して学会研究会での報告、本課題を主題とする専題セッションを開催した。特に、本年度は、「言語単位」から「学習者本位」の学習形態への転換を目指す本研究でとりわけ重要な学習者の言語学習歴(母語+外国語)による統合的言語能力の生成状況(動的ランゲージング)を具体的に認知できる学習者の声を聴取し、さらに言語間の影響性を検討する考察視点についての理論的考察を深化、発展させた。この点は本研究独自の着眼点による研究成果として特記できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①日中英三言語対照学習法と教材作成法の考案、創出:二言語比較が多く、三言語が少ない対照研究の具体的な構築法を考案、創出し、これを教材に反映し、学術理論に裏付けられた日中英三言語対照学習法と教材作りの基礎構築を進めた。
②教材の構成と主題による作成:「発音の学習」は、日中英の音声特色を対照学習できる教材内容の概要・項目(文字と音声、リズム・イントネーション、母音、子音)に基づき作成作業を進めた。特に、微細な相違を習得する発音学習は、母語では得られない外国語学習ならではの発音器官の意識的な動作性の獲得による身体トレーニングを要し、これにより自覚的に言語活動する主体者意識の形成が図れるとの観点に立ち、「言語本位から学習者本位への転換」を目指す新たな多言語学習形態の基盤として理論構築を深化させた。「表現の学習」は、学習者の発信力養成を目指す話題学習(自己紹介、 家族紹介、衣食住等)と文化間の対照比較を明快かつ具体的に例示できる誤用論的教材(謝罪、祝福等)により構成されるため、これに基づく具体的なコンテンツ内容案を練り、作成を進めた。
③システムの設計、構築:日中英三言語の教材を適切、適正に提示できるシステム設計、学習ポイントを明示できる機能等を検討し、入力フォーマットと画面形態で確認できる点検用のDBを開発した。自動音声による音声データを作成し、教材への組み入れ作業を始めた。
④学習者に内在する言語能力の生成状況を認知するための学習者インタビュー調査を行うとともに言語間の影響関係を認知するための言語学的考察を専題に掲げる学会研究セッションを開催し(2022年11月、2023年3月セッションホスト)、これらを基盤に本研究の重要課題でありながら現在日本では十分に浸透していない「ランゲージング」、「動的ランゲージング」について討議し、併せて開発教材のデモを行い、研究課題の発展、進展を図った。

今後の研究の推進方策

最終年度である2023年度は上半期に教材コンテンツを最終完成し、システム構築を完了し、下半期の半ばにユーザー試用実験を行い、最終成果をまとめる。具体的には、2023 年8月~9月初めに学習システムの開発を完了し、11月ごろにユーザー試用実験を行う予定である。ユーザー実験は、当初2022年度に試作システムの中途試用による簡便な実施を考えていたが、実験費用の節減とと教育現場の状況等の諸条件に対応して、2023年最終年度システムの更なる開発進展を得てから行うことにした。試用実験では、三言語同時対照学習に対する学習者の感想(効果、要望)を聴取するほか、複数言語の学習により学習者に内在的、多層的に育まれる言語の枠組みに分断されない統合的な言語能力の生成状況を学習者自身の認知状況を通じて理解できるようにアンケート調査も行う予定である。研究成果については、開発システムの公開、試用実験の考察分析、システム開発研究を通して認知、考察、検討した成果について、論文、学会報告等で発信し、外部意見も取り入れて最終成果としてまとめたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

システム開発費が当初の予想よりもかさむため、人件費による補助作業を委員自身で行うことにより費用の充当を図り、最終年度の開発費の拡充を図った。これにより次年度使用額を生み出した。この次年度繰り越し予算は、2023年最終年度にシステム完成の為の開発費用として使用する予定である。また旅費については、オンラインでの参加により、旅費の支出を見合わせ、これを含めて最終年度の開発費用を拡充し、開発物の完成度を高めたいと考えている。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] 言語能力に着目した多言語学習の試み:中国語学習者のための母語活用型日英中三言語対照学習法&システムの考察2022

    • 著者名/発表者名
      湯山トミ子,神田明延,武田紀子,藤本かおる,篠 塚麻衣子
    • 雑誌名

      信学技報

      巻: 121no. 87, TL2021-11 ページ: 44-49

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 統合的言語能力の動的生成・ランゲージングとは:自律的言語学習の促進を目指して2022

    • 著者名/発表者名
      湯山トミ子
    • 学会等名
      日本英語教育学会・日本教育言語学会第53回年次研究集会 , セッション「複数言語連携学習:進む学習者!出遅れる教材!どうする教育? 統合的言語能力の動的生成・ランゲージングをめぐって」
  • [学会発表] 進む学習者:自然発生的ランゲージングの声2022

    • 著者名/発表者名
      藤本かおる
    • 学会等名
      日本英語教育学会・日本教育言語学会第53 回年次研究集会 , セッション「複数言語連携学習:進む学習者!出遅れる教材!どうする教育? 統合的言語能力の動的生成・ランゲージングをめぐって」
  • [学会発表] 自律的ランゲージングと教育の課題2022

    • 著者名/発表者名
      湯山トミ子
    • 学会等名
      日本英語教育学会・日本教育言語学会第53 回年次研究集会 , セッション「複数言語連携学習:進む学習者!出遅れる教材!どうする教育? 統合的言語能力の動的生成・ランゲージングをめぐって」
  • [学会発表] 日中英三言語連携対照型学習教材アプリ:統合的言語能力の動的生成・ランゲージング、自律的言語学習の促進を目指して2022

    • 著者名/発表者名
      湯山トミ子
    • 学会等名
      日本英語教育学会・日本教育言語学会第53回年次研究集会,パラレルセッション「複数言語連携学習:進む学習者!出遅れる教材!どうする教育? 統合的言語能力の動的生成・ランゲージングをめぐって」
  • [学会発表] 統合的言語能力に着目した複数言語連携学習の構築:内なる言語との内なる出会い(日中英の場合)2022

    • 著者名/発表者名
      湯山トミ子
    • 学会等名
      日本英語教育学会・日本教育言語学会・日本ビジネスコミュニケーション学会臨時研究集会
  • [学会発表] 身体化アプローチによる外国語の発音学習:日中英連携対照学習の場合2022

    • 著者名/発表者名
      湯山トミ子
    • 学会等名
      明治大学サー ビス創新研究所研究会
  • [学会発表] 言語能力の動的生成をさぐる:日本語母語話者の中国語声調学習と英語音声学習2022

    • 著者名/発表者名
      湯山トミ子,神田明延, 篠塚麻衣子,藤本かおる,武田紀子
    • 学会等名
      日本英語教育学会・日本教育言語学会・日本ビジネスコミュニ ケーション学会臨時研究集会
  • [学会発表] オンライン授業を問い直す:学びの最適化をめざして2022

    • 著者名/発表者名
      高橋薫,保坂敏子,藤本かおる,尹智鉉
    • 学会等名
      日本語教育学会2022年度秋季大会
  • [学会発表] コロナ禍の大学における日本語教育現場を支えたもの:非常勤講師を対象としたフォーカスグループインタビューから2022

    • 著者名/発表者名
      尹智鉉,藤本かおる
    • 学会等名
      日本語教育学会2022年度春季大会

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公開日: 2023-12-25  

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