研究課題/領域番号 |
21K02809
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
高野 辰之 関東学院大学, 理工学部, 助手 (30637294)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学習支援システム / プログラミング / ソースコード解析 |
研究実績の概要 |
本研究はWebブラウザを利用したプログラミング学習環境において,学習内容の制約とサーバーの計算負荷の両方を少なくするシステムの構築を目的としている.目的を実現するにあたり,従来の一般的な方法であるサーバー側で行う実行・評価機能をWebブラウザ側に移行する.そして,その環境で学習者が作成したプログラムに対してソースコード解析器を動作させ,プログラムの文法上のミスや課題の仕様に対する不備などをシステムにより指摘して適切なサポートが行えるようにする.研究の遂行に関しては,新型コロナウイルス感染症の影響から研究協力者とオンラインでの打ち合わせなどの方法を用いて工夫をしているが意見や情報交換を得る機会は当初の予定よりは減少している状況である. 2021年度では,本研究で主要な部分となるWebブラウザでのプログラムの実行環境となる仮想マシンの組み入れに関する試験的な実装,学習者へサポートを行うためのソースコード解析器に関する評価項目の検討についての2つを行った.具体的に1つ目については,Webブラウザでコンパイルや実行する端末の画面を作成して仮想マシンを組み入れた環境を構築し,演習で用いるプログラムの動作確認を行った.その結果,実行したプログラムに対するキーボードからの入力などで実際の動作に近づけられなかった部分が課題として残された.2つ目のソースコード解析器の評価項目と学習者に伝えるメッセージについては,実際に100名規模のプログラミング入門科目に採点支援ツールとして活用し,秋学期に1コマ分で行われた全16個の課題を対象として分析した.そして,指摘項目の正確性やメッセージについては科目を受講している学生を対象にアンケートを実施することで評価を行った.この結果について,各課題のツールによる評価とアンケートを精査し成果をまとめ,2022年度に学会発表などで公表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではコンパイルを行うプログラミング言語の1つであるJavaを対象にしている.そしてWebブラウザ(JavaScript)でのプログラム実行環境である仮想マシンは他の研究グループによる成果物であるが,その成果物のプロジェクトは機能的な更新が数年前に止まっている.そのため,今後の機能追加や修正を行うために再構築が行える環境を整える必要があった.しかし,過去の依存するライブラリなどの差異から再構築に困難な部分があり,当初の見込みより時間がかかった.また,新型コロナウイルス感染症の影響により,研究代表者が所属する機関のネットワーク環境や教育現場での教育方法の変化などへの対応から,構築するプログラミング学習サイトの提供方法を再度検討することになった.さらに,世界的な半導体不足の影響から,パソコン価格の上昇や供給時期の遅れなどに対応するため,サーバーにするワークステーションの調達時期や方法を大幅に見直す必要が生じ,調達時期が当初予定してたより半年ほど後ろにずれてしまった. これらのことから,プログラミング学習サイトのシステムについて試験的な構築と評価を行うことにより,途中の成果として報告する予定が遅れている.研究課題の1つである学習者のプログラムを評価するソースコード解析器の評価項目やメッセージについては,システム構築とは分けて研究を進めることができるため,こちらについては順調に進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施の2年目は学習サイトのシステムの試験運用の実施と評価を目指して構築を行う.最初に,これまでの研究で開発したサーバー側で実行・評価型のシステムをWebブラウザのみ実行・評価型へ置き換える.その結果について,Webブラウザでの仮想マシンを組み入れた場合のプログラムの実行パフォーマンスの測定やプログラミング環境としての実際のパソコンとの再現度の違いなど検討して,プログラミング学習サイトの形態へ機能追加していく.また,一般的なサーバー側での実行・評価も行えるように構築し,構築したシステムの比較実験を予定している.比較実験に関しては,実施する機関のオンライン教育への対応などによりネットワーク設備の増強や変更を踏まえて,実施方法を研究協力者と検討していく. そして,ソースコード解析器による評価項目やメッセージについての検討も引き続き進めていく.また,1年目では行えなかった途中の成果発表を行い,関連する研究者などの交流や意見交換により研究の改善を行っていく計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究進捗の予定よりWebブラウザで動作する仮想マシンの再構築環境の整備やサーバーの調達時期や遅れが生じたことにより,研究成果の公表が次年度に持ち越されることになってしまった.そのため,当初予定していた研究成果の公表にかかる費用を含めた額が次年度使用額として計画されている.
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