研究課題/領域番号 |
21K02810
|
研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
谷口 哲也 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (90625500)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 学習支援 / アダプティブラーニング / クラスタリング / 問題自動生成 / 生成系AI |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,大学の基礎的数学科目での個別最適化された学びを支援する枠組みの構築であり,特に学生の誤答の分類・分析によりその学習者の状態に応じた学習プラン案を提供するアダプティブラーニング環境の実現である. 研究遂行上,次の3フェーズを想定している:①誤答収集フェーズ:授業,学習支援,質問対応,個別指導から正答誤答を収集する.②誤答分析フェーズ:収集した正答・誤答を計算機で分析する.③学習プラン案提供フェーズ:個別指導時に学生に応じた学習プランを提示する. 2023年度は,①誤答収集・②誤答分析フェーズを継続しつつ,③学習プラン案提供フェーズの実現に向けて取り組んだ.誤答例の蓄積は継続中であり,問題ごとの正誤パターンで学習者をクラスタリングする試みを行い,クラスタごとの特徴を評価中である.これにより,学習者の状態に応じたきめ細かな学習プラン案の提供が可能になると期待される. さらに,生成AIを活用し数学問題を自動生成するプログラムコードの構築に取り組んでおり,手計算向きの数字設定や特殊な係数の際に計算が「退化」するケースの扱いに注意が必要であることが判明した.自動生成された問題テキストを各種形式に変換する方法を検討し,実用的な手段を構築済みである.また,問題難易度や係数設定の勘所を伝えるプロンプトの作成も試行錯誤しノウハウを蓄積中である.これらにより,学習者の状態に応じた適切な難易度の問題を自動生成・提供することが可能になると考えられる. 以上のように,2023年度は①誤答収集・②誤答分析フェーズを継続しつつ,③学習プラン案提供フェーズの実現に向けて,学習者のクラスタリングと問題の自動生成という2つのアプローチで研究を進めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誤答例の収集と分析は継続して順調に進んでおり,蓄積されたデータをもとに学習者のクラスタリングを試みるなど,新たな分析手法にも着手できている.また,生成系AIを活用した問題の自動生成についても,実用的な手段の構築に目処がたつなど,一定の成果が得られている.一方で,これらの手法を実際の学習支援にどのように活かしていくかについては,まだ課題が残っており,引き続き検討が必要である.全体としては,概ね順調に進展していると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでに得られた知見をもとに,③学習プラン案提供フェーズの実現に向けて,より具体的な方策を検討していく必要がある. 学習者のクラスタリングについては,各クラスタの特徴をより詳細に分析し,それぞれのクラスタに適した学習プラン案の提供方法を検討する.また,クラスタリングの精度を上げるために,誤答例の収集と分析を継続し,データの拡充を図る. 問題の自動生成については,生成系AIを活用した手法をさらに洗練させ,より実用的なものにしていく.特に,問題の難易度や形式をより柔軟に制御できるようにすることで,学習者の状態に応じたきめ細かな問題の提供を目指す. また,これらの手法を実際の学習支援の場で試行的に運用し,その効果を検証するとともに,運用上の課題を抽出する.これらのフィードバックをもとに,手法のさらなる改善を図っていく. 最終的には,学習者のクラスタリングと問題の自動生成を組み合わせた,アダプティブラーニング環境の実現を目指す.そのためには,システムの設計・開発や,運用体制の整備なども必要になると考えられる.これらについても,並行して検討を進めていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年度はクラスタリングと問題自動生成の手法の検討に注力し,一定の成果が得られたものの,これらを実際の学習支援に活用するための具体的方策の検討は,十分にできなかった.また,手術の影響もあり,学会発表などは控えめにせざるを得なかった. 2024年度は,これまでの成果をもとに,学習支援の実践に向けた取り組みを本格化させたい.具体的には,以下のような使用を計画している. ●学習支援システムの設計・開発に必要な機材・ソフトウェア等の購入●システム運用に必要なクラウドサービス等の利用料●学習支援の実践に必要な教材・参考書等の購入●学会・研究会への参加旅費,論文投稿料 これらの使用を通じて,これまでの研究成果を実践に活かし,より効果的な学習支援の方法を確立していきたい.
|