2023年度も,前年度に引き続き情報セキュリティ学習・教育ツールを複数開発した.これまでとの大きな違いは,本プロジェクト名にもある「ユーザ視点に立脚」という点に主眼を置き,ユーザがある状態に達する・インシデントを起こすまでのプロセスを学習できるゲーム内容にした点である. たとえば,ある状態やインシデントに至るまでの過程を,ユーザ視点に立脚し,ユーザが直面する各立場から学べるようゲーム設計を試みた.具体的には,道徳や犯罪心理,情緒の発達が学べるカードゲーム「マイライフ」では,「犯罪をおこさないのはなぜなのか」「犯罪行為をどうして起こすのか」という両視点から道徳/犯罪心理を楽しみながら学ぶことができるよう設計されている.また,誹謗中傷対処方法学習ゲームでは,だれもが誹謗中傷の加害者にも被害者にもなりうることから,両方の立場を同時に経験できるカードゲームとなっている.さらに,一部のインシデントは人を騙すところから始まるため,「なぜ騙されられるのか」だけでなく「どのようにして騙すのか」も体験できる対面型コミュニケーションゲームも開発した. ユーザ視点からすると,インシデントに至るまでの過程を,実例に沿って具体的に知る,ということも重要と考えられる.そこで,SNS炎上の過程を学ぶゲームでは,対戦式のカードゲームとボードゲームを組みあわせ,炎上の背景にある炎上の構造や炎上に至るまでの3つの過程(発見・拡散・報道)を学習できるようにしている. そのほか,XRを用いた地震体験型学習アプリケーションの開発にも取り組んだ.あらたにマルチプレイ機能などを盛り込むことで,多様な体験をさせ,セキュリティ教育・防災教育にありがちな,学んでも実際の行動に移さない,という課題の解決を試みた.
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