研究課題/領域番号 |
21K02816
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
白土 浩 近畿大学, 産業理工学部, 准教授 (30315460)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 深層学習 / 教育ビックデータ / L7FW |
研究実績の概要 |
本研究では大学等の高等教育機関における中途退学者の減少を目的に教育ビッグデータや学生が所有するスマートフォンやBYODによる構内無線LAN接続履歴や通 信履歴を活用した学習指標として、「行動指標」「受講指標」「成績指標」を生成した上で深層学習により履修指導が必要な学生をスクリーニングすることを目的としている。 本年度は前年度から実装、データ蓄積を進めている「行動指標」およびLayer 7 FireWall(L7FW)のログを基にした「受講指標」について可視化するための技術開発を進めた。具体的には通信で使用したアプリケーション種別をGoogle Classroom や Moodle といったLMS接続、講義等で用られているSNS(Slack)通信、講義とは無関係と思われる動画視聴やその他SNS接続を受講生グループごとに集計する方法について実装した。そして、集計したデータについて講義時間内および15回の講義を通しての変動を示すグラフとして描画する Webアプリケーションを構築した。 実際に幾つかの講義を対象に集計と分析を行った結果、講義期間を通しての受講状況の変化や90分の講義時間内における講義内容と受講生の挙動の傾向が、2から4グループ程度に分類できることが判明した。しかしながら成績との相関性については必ずしも一致しないケースが見受けられた点、QUIC と呼ばれる Google が提唱する通信方式を用いた場合、L7FW において通信アプリケーションを特定できない点など新たな課題も見つかった。今後は、L7FWの設定を QUIC の代わりに TCP で通信するような設定に変更することで、より正確なデータを取得する手段について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年の進捗として、「受講指標」のデータ収集として、L7FW から得られるログを解析し、アプリケーション種別により「講義関連」、「研究調査」、「SNS」、 「動画視聴」といった分類でカテゴライズしデータベース化された情報を講義の実施日ごとに集計し可視化するWebアプリケーションの構築までは完了している。しかし「行動指標」や「受講指標」については、コロナ禍の影響で、従来までに蓄積した学内ネットワークの利用状況とは大きく傾向が異なっているため、十分な量の情報蓄積が進んでいない状況である。このため、これらを画像情報として重畳することで得られる深層学習用の訓練データセットの生成が進んでいない状況である。また、最近、Youtube や Google Classroom, Google Workspace などで導入が進んでいる QUIC による通信では L7FW においてアプリケーション判定ができないという新たな問題が判明したため、これを回避するためのネットワーク設定変更方法と影響範囲についても十分に検証した上で適用を進めていく必要があり、データ収集に遅れが生じる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はWi-Fi の接続履歴情報の収集および解析を進め、学内での人の流れ滞在時間などの傾向が前年度と近いのか、またはコロナ禍以前に戻ったのか?について調査する。その結果に基づき、これまで収集したデータのうち研究利用可能な情報を選別した上で、「行動指標」の策定を進める。併せて「成績指標」についても上記の結果を基に検討を進める予定である。 また、L7FW において QUIC をブロックすることで Google 系のアプリケーションを適切に判別できる見込みであるが、この点についても設定変更および動作検証や影響範囲の調査を進める。これにより、判別が困難であった動画閲覧と講義資料閲覧や文書作成などの作業を分類可能とし、より精度の高い受講指標の作成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
検証用に導入した計算機サーバが当初予定額を下回ったため、次年度繰越し生じている。繰越分については次年度の費用と合わせ研究で利用するサーバの増強や蓄積するデータ容量が当初見込みを大幅に超えているため、各種データの保存用ディスク購入に当てたい。
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