研究課題/領域番号 |
21K02818
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
堀 純也 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (70368611)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 一次救命処置 / 心肺蘇生 / リモート講習会 |
研究実績の概要 |
本研究は,パンデミック下においてもソーシャルディスタンスの確保・感染防止対策を取りながら個々に一次救命措置における心肺蘇生の講習ができるツールを開発することを目的として研究を進めている.具体的には.ペットボトルなど,身近に手に入る密閉容器のキャップに圧力センサを取り付け,その容器を圧迫した際に生じる圧力変動を捉えることによって,胸骨圧迫手技の定量的な評価ができるツールの作製を行っている.胸骨圧迫によるペットボトル内の圧力変化を捉えるにあたって,センサの圧力計測範囲等を調べる必要があるため,2021年度の当初予定では,圧力により抵抗が変化する薄膜型のセンサの評価を進める予定であったが,新型コロナウイルスの感染拡大にともなう世界的な半導体不足や電子部品の供給不足により,センサの納期の目処が立たない状況が続いたため,2022年度に実施予定としていた「◆胸骨圧迫評価ツールの改良(通信機能搭載)」について先に着手した. 具体的には,Wi-FiとBluetoothを内蔵し,低消費電力なマイクロコントローラであるESP32を用いて,Bluetooth通信を用いて圧力センサから得られた信号を送信するプログラム開発を行った.胸骨圧迫にともなう圧力センサの信号をリモートで受信することが確認できたため,その成果を一般社団法人日本医療機器学会主催の第97回日本医療機器学会大会に演題登録し,発表の準備を進めている(2022年6月2日~4日に開催される学会で発表予定). また,薄膜センサは耐久性に若干難点があることも懸念し,ペットボトルの口付近に取り付け可能なサイズの安価な圧力トランスデューサについても性能評価の準備を進めた.2021年度については,新型コロナウイルスの感染拡大の影響で若干,予定に変更は生じたが,研究の順序を入れ替えつつ,対応して現在に至っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,胸骨圧迫の様子を検出するための圧力センサ(薄膜型のセンサ)の抵抗変化を様々な条件で評価し,胸骨圧迫の際に発生するペットボトル内の圧力変化を捉えるのに最適な条件を探ることを目的としていた.しかしながら,新型コロナウイルスの感染拡大により,半導体不足や電子部品の不足が世界的に生じたため,当初導入予定にしていた薄膜センサの入手が困難な状態が続いた.2021年の年末頃からようやくいくつかのセンサを入手することができるようになったが,詳細なセンサの評価までは至らなかった, その一方で,Bluetooth 通信機能をもったマイコンの入手ができたため,2022年度に実施予定としていた「◆胸骨圧迫評価ツールの改良(通信機能搭載)」の部分を先に着手した.Wi-FiとBluetoothを内蔵し,低消費電力なマイクロコントローラであるESP32を用いて,以前に当研究室で開発していた胸骨圧迫ツールと組みあわせて遠隔計測が可能か評価した.センサの信号をBluetoothで送信できることが確認できた. また,入手した薄膜センサの耐久性を考慮し,薄膜センサに変わる圧力トランスデューサについても性能評価の準備を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,薄膜センサの入手が遅れたため,今後は,2021年度に実施予定としていたセンサの評価を秋頃までに実施する.当初予定した薄膜の圧力センサについては耐久性についても評価すると共に,気体・液体に使用できる安価な別の圧力センサを用いた評価を行い,最終的に使用するセンサを決定する. 一方,胸骨圧迫評価ツールの改良(通信機能搭載)については着手しているため,更にユーザーインターフェースの部分の改善を行うと共に,次のステップとして,Zoom等のリモート会議システムを利用して,秋頃までに胸骨圧迫の手技の様子が遠隔地へリモート共有できるように改良を進める.また,夏頃からは当初の予定通り小型マイコンを用いた模擬AED の作製について着手する.まずは,模擬AEDの中枢となる画面表示部分と音声出力部分をマイクロコンピュータを使用して作製する.筐体部分は3Dプリンタを使用して作製する. 新型コロナウイルスの感染拡大にともなう半導体・電子部品の供給不足は解消しつつあるが,またいつ供給不足に陥るか不明な点もあるため,研究を遂行するために必要な電子部品等は適切なタイミングで早めに調達しておくように心がける予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,半導体・電子部品の入手が困難な時期があり,2021年度内に購入予定であったものが一部入手できなくなった(具体的には,圧力センサ等の入手が2021年の年末頃まで納品の目処が立たなかった).また,新型コロナウイルスの感染拡大により,参加予定としていた学会がオンライン開催となってしまったため,旅費として確保していた金額を使用しなかった. 現在は,半導体部品・センサ等の入手も比較的容易になってきたため,2021年度に入手予定だったものも含めて2022年度に物品費として使用予定である.
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