本研究は,パンデミック下など,感染防止対策が必要な場合でも個々に一次救命措置における心肺蘇生の講習ができるツールを開発することを目的として3年間にわたって研究を実施した。 2021年度には,無線通信機能を内蔵し,低消費電力なマイクロコントローラであるESP32を用いて,以前に当研究室で開発していた胸骨圧迫ツールと組み合わせたシステムを作製し,遠隔計測が可能か評価した.それによって,薄膜圧力センサの信号をBluetooth送信できることを確認した. 2022年度には,前年度に作製したセンサの評価結果を第97回日本医療機器学会(パシフィコ横浜,神奈川県横浜市)にて「遠隔モニタが可能な一次救命講習会用胸骨圧迫評価ツールの作製」として報告した.また.その後,ESP32を内蔵し,2インチIPS液晶を有したマイコンであるM5Stackに内容を移植し,改良を進めた.当初,教育用模擬AEDの作製にも着手する予定であったが,新型コロナウイルスの感染拡大による半導体不足等の影響のため,進行が若干遅れていた. 2023年度にはM5Stackへの移植により,より小型化・可搬性を持たせた胸骨圧迫評価ツールについて,第98回日本医療機器学会(パシフィコ横浜,神奈川県横浜市)にて「小型マイコンモジュールを用いた一次救命講習会用胸骨圧迫評価ツール」として報告した.また.進捗が遅れていた模擬AEDも完成し,第16回日本医療教授システム学会(武蔵野大学有明キャンパス,東京都)にて「音声再生機能をもった液晶付き小型マイコンを利用した模擬AEDの試作」として報告した.また,これらの成果を日本シミュレーション医療教育学会雑誌に論文投稿し,「一次救命講習に利用可能な小型のマイコンモジュールを用いた胸骨圧迫評価ツールおよびAEDシミュレータの開発」という題目で掲載が決定した.
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