研究課題/領域番号 |
21K02821
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
早稲田 一嘉 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20390479)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジー最適化 / アディティブマニファクチャリング / DX(デジタルトランスフォーメーション) |
研究実績の概要 |
科学研究費助成事業申請書の「補助事業期間中の研究実施計画」に基づき、前年度、前々年度に作成した「トポロジー最適化をオープンソースで実現し加工するまでの手順」を記した教材(第2版)を5年生開講科目「CAE演習」に引き続き導入した。上述の教材開発と並行して、小中学生向けのトポロジー最適化と3次元造形を体験する公開講座を2023年夏季休業中に実施した(3Dプリンタの調子が悪く、講座募集人数は少なくした)。 また、2年生の機械実習Ⅱにおける3DプリントやCNC加工機を体験するワークショップでもトポロジー最適化を体験可能とする教育環境を準備をし、2022年度は一部の学生が試行的に実施したが、2023年度は2年生すべてに実施できた。2023年度には新たにトポロジー最適化した形状をレーザー加工機にて切断する手順書も作成し、これらの授業や講座の実施のために小型レーザー加工機を購入したことでトポロジー最適化などのデジタル設計ありきの設計を考えることができる学生の教育環境を構築した。 本課題に関連する発表として、日本機械学会 2023年度年次大会(環境エネルギー・工学技術教育(技術と社会部門))、日本機械学会 技術と社会部門講演会 2023年度講演会で口頭発表をした。また、間接的な研究内容の発表として、2023年度神戸高専研究紀要(Vol.62)にて論文が掲載され、2023年度神戸高専産金官学技術フォーラムおよび日本設計工学会 関西支部 2023年度研究発表講演会(学生優秀発表賞受賞)にて指導している学生が口頭発表をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本校は2023年4月に法人化したが、その対応が多かったため、特に以下の2点の進捗が遅れた。 (1)小中学生向けに公開講座を実施したが、法人化と数理・データサイエンス・AI教育プログラムなどの校務等による自身の多忙化によって多くの回数を実施できなかった。 (2)半導体不足による、3DプリンタやGPUの価格の高騰は少し落ち着いたものの、急激な円安となったため、新規の3DプリンタやPCの購入は見送った。 教材開発については新たな開発よりも、使用しているオープンソースのソフトウェアのバージョンアップに伴うUI(ユーザーインターフェース)の変更に伴う教材(テキスト)の修正に時間を割かねばならなかった。また、その教材を用いた授業や講座においての実践後に実施予定の教育効果を確認するためのアンケート実施に支障がでた(過去2年間と同様)。 しかしながら、「CAE演習」にてトポロジー最適化の授業を昨年度に続き実施でき、計画には入れていなかった2年生開講科目の機械実習Ⅱにおけるトポロジー最適化の体験を全ての機械工学科2年学生に対して実施できたことは、一定の進捗があったと言える。 区分を「遅れている」としたが、「補助事業期間延長」を申請し、次年度に遅れている計画を実行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジー最適化に並んで、AM(アディティブマニュファクチャリング)との親和性で注目されている「ジェネレーティブデザイン」がある。これは、寸法や材質などのパラメーターに幅をもたせた設定をし、コンピューターにその設定範囲内で様々な寸法の形状を提案させるCAEの手法である。ジェネレーティブデザインにて提案された形状に対してトポロジー最適化をすることで、今まではベテラン技術者のノウハウに頼っていた設計を補間してもらったり、固定観念に縛られて発想されてこなかった形状にたどり着く可能性のある技術である。このジェネレーティブデザインの機能は商用のCAD/CAM/CAEソフトウェアでは導入がされつつあったが、オープンソースのCAD/CAM/CAEのFreeCADでは2023年前半の時点では、FEMbyGENプラグイン1.0にてトポロジー最適化は別作業として手動で実施しなければならないものであったが、2.0へのバージョンアップによりトポロジー最適化も内包したため、このバージョンを生かした教材を作成し、科目への導入を試みる。DualSPHysicsというSPH法(Smoothed Particle Hydrodynamics)による流体シミュレーションもFreeCADにて利用可能なDesignSPHysicsマクロが進歩を遂げ、DEMが利用できるようになったため、利用手法を習熟し、教材化することでFEMによるCAE以外のCAE手法への関心度を高めることも試みる。 上記のような方策をし授業に展開した後にアンケートの実施をする。 また、引き続き、卒業研究、専攻科特別研究そしてものづくり系部活動でのトポロジー最適化やジェネレーティブデザインなどのAM技術に通ずる最近の設計手法の導入実績を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」にも記載したが、半導体不足は解消傾向になったが、円安による物品価格上昇などがあり、購入数を意図的に予定よりも減らした。半導体の価格変動は予測できないものの国外での生産が増え、供給量が安定してくれば価格が下がると予想され、予定のデジタル加工機やPCの購入が可能になると考える。また、3Dプリンタなどはまだ発展途上の機器で年を追うごとに性能が上がり価格が下がる傾向にあるため、本研究課題の補助事業期間の中で可能な限り遅らせて購入したほうが研究遂行には都合がよいと考える。
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備考 |
CAE演習の教材および2年実習におけるCAE教材は現在のところ学内のみで公表。本研究課題の実施期間が終了した際には公表を検討している。
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