研究課題/領域番号 |
21K02824
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
菅谷 克行 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (30308217)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視線移動 / 読解 / 電子メディア / メディア特性 / 電子書籍 / 集中力 |
研究実績の概要 |
本研究は、文章読解・校正時の視線移動データに基づいて、表示媒体の違いによる読解過程の特徴・差異を明らかにすることが目的である。具体的には、文章読解時と文章校正時の被験者の視線移動情報を、眼球運動測定装置を用いて複数の特徴量(視線の停留点、停留頻度、停留時間、逆行など)として獲得し、これらのデータを定量的に分析することにより、文章読解過程の理解度・疲労度・集中度・注意力等を推定することを目指している。 令和3年度は、(1)電子メディア環境における文章読解の現状調査(メディア接触の観点からの調査)、(2)先行研究の知見に基づいた実験デザイン、(3)実験による文章読解時の視線移動データの獲得・分析の実施を計画していた。(1)については、大学生を対象としてメディア接触状況や電子メディア利用状況についてオンラインでアンケート調査を行い、その結果を「電子メディア環境における読みの再考」という題目で2021 PC Conference(コンピュータ利用教育学会研究大会)にて発表した。分析結果に関する議論とともに、本研究全体の意義や位置づけについても意見交換することができた。(2)については、眼球運動と読書・知的活動との関係性について文献調査をし、本研究の実験全体のデザイン(調査項目・実験手続き・留意点などを整理)を行い、実験実施への準備を整えることができた。しかしながら、(3)については、前年度から続いているコロナ禍による移動・行動制限の影響を受け、実験で用いる装置の選定やキャリブレーション、予備実験などを思うように実施することができず、計画どおりの遂行が困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、(1)電子メディア環境における文章読解の現状・課題をメディア接触に関するアンケート調査により明らかにすること、(2)先行研究の知見を整理し、それに基づいた実験全体のデザインをすること、(3)実験による文章読解時の視線移動データの獲得・分析を実施することが、令和3年度の目標であった。 (1)については、大学生を対象としてオンラインでアンケート調査を行い、メディア接触の現状として、スマートフォンを利用した電子メディア接触がほとんどであること、電子メディア利用としては動画やSNSなど「見る」ためのコンテンツの利用者数・利用時間が圧倒的に多いこと、「読む」メディアとしての電子書籍利用者は少なく、その理由として、集中力の維持や目の疲労に対する懸念があること等が明らかになった。これらの結果により、本研究の意義や課題が明確化された。(2)については、これまで研究代表者が取り組んできた調査・実験の成果に加え、眼球運動と読書・知的活動との関係性に関する文献調査を通じて、本研究の実験全体のデザイン(調査項目・実験手続き・留意点などを整理)を行い、実験実施に向けた準備を整えた。以上により、(1)(2)についてはおおむね計画どおり遂行できたと判断している。 しかしながら、(3)については、前年度から続いているコロナ禍の影響により遅れが生じてしまった。新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置により、移動や行動の制限があったため、実験で用いる装置の業者による説明やデモを受ける機会を設けることがなかなかできず、測定装置の選定やキャリブレーション、予備実験の実施などの実施が遅れてしまった。その結果、予定していた文章読解時の視線移動データの獲得・分析のための実験に取り組む時期も遅れてしまった。 以上の理由により、達成度としては、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、令和3年度に遂行できなかった文章読解時の視線移動データの獲得・分析を実施し、その結果をまとめる。できるだけ早い時期に学会・研究会で口頭発表を行い、議論や意見交換をしながら成果を論文としてまとめていく。 次に当初の計画どおり、文章校正時の視線移動データの獲得・分析に取り組む予定である。文章校正時(本研究では、より注意力・集中力を要する読解過程という位置付け)の視線移動データを獲得し、それらを専用の解析ソフトウェアを用いて定量的に分析し、視線移動の特徴量と文章校正時における読解行動・状態にどのような関係性があるのかを明らかにする。 そして、以上の2つの実験結果を総合的に分析し、読書中の疲労度や集中度を視線移動の特徴から定量的に推定する方法について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を遂行する上で優先的に入手すべき眼球運動測定装置(一式)と眼球運動動画解析プログラムの購入による執行のみで本年度予算の上限近くとなってしまい、入手を検討していた実験用電子書籍デバイスを購入するには金額不足となってしまった。そのため少額残金として次年度に繰り越すこととした。この繰越金は、次年度の予算と合わせて、実験で使用する電子書籍用デバイスの購入に使用する計画である。 その他、次年度の予算については、当初の計画どおり執行する予定である。
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