研究課題/領域番号 |
21K02850
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
内山 隆 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40389648)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育実習 / 授業実践力 / 配属条件 |
研究実績の概要 |
令和3年度に小学校で4週間の教育実習Ⅰ(主免実習)を行った3年次の学生で、1学級に1人の教育実習生が配属された者(以下「1人配属」と表記)と1学級に複数の教育実習生が配属された者(以下「複数配属」と表記)、それぞれ10名ずつの教育実習記録「教育実習のまとめ・考察」の文章を分析対象とした。 まず、「1人配属」と「複数配属」の文章記述において、使われる単語の出現頻度に違いがあるかを品詞ごとに比較した。名詞については、いずれも「授業」や「児童」「子ども」「子どもたち」の頻度が高いことから、自らが行った授業と学習者である子どもについての記述が多いことが共通点である。授業実践に関わっては、「1人配属」で「指導」「発問」「理解」が上げられ、「複数配属」では「課題」「指導」「発問」が上げられ、違いとして「理解」と「課題」が上げられる。動詞については、共通して多いのは、子どもが「できる」「学ぶ」「考える」「わかる」「気づく」ことである。一方、実習生に関しては「1人配属」で「関わる」「伝える」「教える」「生かす」「作る」が多く、「複数配属」で「行う」「つくる」「生かす」が多い。形容詞は、わかりやすい」「よい」「うまい」「面白い」「楽しい」といったプラス面と「難しい」「悪い」といった課題面についての記述が多いことが捉えられる。 次に、「1人配属」と「複数配属」の文章記述において、これらの単語がどのように共起しているかを分析した。共通して、授業と子どもができる、考える、感じることとの関連が見られた。複数配属に特徴的なのが課題とできる、課題と授業との関連についての共起回数の多さが捉えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、予備調査的に「1人配属」と「複数配属」の教育実習記録「教育実習のまとめ・考察」の文章を分析した。単語の出現頻度や単語ペアの共起回数の抽出及び比較から、授業実践に関連して「1人配属」では「指導」「発問」「理解」、「複数配属」では「指導」「課題」「発問」といったキーワードが捉えられた。また、単語ペアの共起回数の分析から、「授業と子どもができる、考える、感じること」との関連が捉えられた。 教育実習の異なる配属条件による違いは、単語の分析からは十分に明確にならないことも明らかになった。1つの文章をひとまとまりに捉えて、意味内容を分析しながら授業実践力との関連を考察する方法で研究を進めることにしたい。また、複数配属で捉えた「課題」をどう解釈すれば良いかも検討課題である。配属条件の違いと関連するのか、学校の授業づくりの特徴を表しているのか、そのことと教育実習生の授業実践力との関連はどうかという課題も明らかになった。 なお、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、学生への聴き取り調査については実施できていないため、次年度に実施することとする。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、前年度に明らかになったキーワードやそれらの関連から捉えられる、教育実習における授業実践力についての分析カテゴリーを設定する。また、単語では捉えにくい教育実習の異なる配属条件による違いについては、文を単位とする分析と文と文の関連から明らかにし、分析カテゴリーに加える。 勤務校の教育実習部会及び附属学校と連携して、調査対象者を「複数配属」の実習生と同数程度の「1人配属」に依頼し実施する。分析カテゴリーをもとに教育実習記録「教育実習のまとめ・考察」の文章を分析し、聴き取り調査も行う。 以上から、教育実習の配属条件の違いによる授業実践力への影響について明らかにしていく。その成果を教育実習プログラム及び教員養成カリキュラムの評価・改善に資する知見を提供し、教育実習における授業実践力の育成について具体的なプログラムを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、学会への出張がなくなり、旅費の支出ができなかった。令和4年度も招集による学会が開催されなければ、教員養成大学への聴き取り調査を実施し、有効活用したい。消耗品についても、聴き取り調査を実施しなかった関係で次年度に支出することとした。
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