研究課題/領域番号 |
21K02860
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
大下 晴美 大分大学, 医学部, 准教授 (00618887)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 英語絵本 / NIRS / 読み聞かせ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,発達・学習段階の異なる学習者の英語絵本読み聞かせ聴取時における脳活性状態の差を検証し,脳メカニズムに即した英語絵本読み聞かせ教材の選定方法や指導法に関する教育的示唆を得ることである。 本研究課題の初年度である2021年度は,2022年度以降に実施する実験準備として,研究実施計画に示した (1)国内外の文献の検討,(2)倫理委員会への申請・同意書等の作成,(3)被験者の募集,(4)実験教材の作成を行う予定であった。(1)においては,外国語による絵本読み聞かせに関するNIRSの先行研究はほとんど見られないため,使用機器や分野を限定せず,fMRIや脳波に関する研究や言語障害などの医学研究を含む言語理解に関する脳機能についての幅広い文献の検討を行った。(4)に関しては,(1)で得た知見に基づき,未知語に対する寛容度の検証を行うための実験教材を以下の手順で作成した。まず,検定教科書等を用いて小学生および大学生の既習語に関する調査を行った。しかし,学力差の大きい大学生においては英語の未知語の設定が困難であり,実験内の未知語数に差が生じる可能性があるため,一部ドイツ語・スペイン語などのアルファベットを使用している外国語も含むことにした。また,本研究課題は絵本読み聞かせに焦点を当てているため,既知語・未知語ともに,文字のみの場合,文字と絵の場合を組み合わせた場合の脳活性状況を観測し,未知語の意味推測における挿絵利用の脳内メカニズムについても検証できるよう実験教材を設定した。(2)においては,新型コロナウィルス感染症に伴う来校者制限によって購入予定機器のデモ・詳細説明等を受けることができなかったため,使用機器が確定できず倫理委員会への申請書類・同意書はほぼ完成しているが,承認はまだ得られていない。そのため,(3)の実施には至れなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は本研究課題の初年度であるため,研究課題遂行に向けた諸準備が計画されていた。研究実施計画に示した4点の中で,国内外の文献の検討,未知語の寛容度に関する実験教材の作成については予定通り実施することができ,本研究課題の実験実施に向けての準備は着実に進展している。 一方で,倫理委員会への申請・同意書等の作成,被験者の募集に関しては,新型コロナウィルス感染症に伴う行動制限の影響で使用機器に関する申請書類が整わなかったため,倫理委員会の承認をまだ得られていない。そのため,被験者の募集も行うことができなかった。しかし,上記以外の書類はすでに作成しており,行動制限も解除されたことから,2022年度早期に申請を行う予定であり,今後の研究計画に大きな支障はなく,次年度以降の研究計画の遂行に向けて十分な準備が整いつつあると考える。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症に関する行動制限等はなくなったが,本研究課題の被験者はいまだに感染の割合が高い小学生・大学生であるため,本年度の研究実施計画については,当初の計画を必要に応じて修正しつつ遂行する予定である。 本年度の研究実施計画において予定しているのは,(1)倫理委員会への申請,(2)被験者の募集,(3)小学生と大学生における未知語に対する寛容度に関する実験の実施の3点である。(1)・(2)は前年度の積み残しであるが,すでに準備を進めているため,(1)の申請・承認後すぐに(2)を実施し,(3)に着手する。ただし,(3)に関しては,新型コロナウィルス感染状況によっては順調に進まないことが想定されるため,2023年度以降に予定していた(4)未知語の割合,文字や絵の分量の異なる教材の効果に関する実験,(5)指導法(コンテントスキーマの有無)の違いにおける効果に関する実験の2つの実験教材の作成に着手し,2023年度以降に(3)の実験期間が延長となっても(4)・(5)の実験を並行して実施できる準備を行う予定である。 また,事前研究となる小・中・高・大の発達・学習段階の異なる学習者に対する英語絵本読み聞かせ聴取時の脳活性状況の差異について学会で発表したところ,NIRS研究の専門家から多くの示唆を得ることができた。そこで,後頭葉の視覚野,側頭葉の聴覚野,言語野であるブローカ野・ウェルニッケ野と前頭前野の脳活性状況の関連性についての検証を行うことができれば,英語絵本読み聞かせにおける脳内プロセスに関するより具体的な知見を得られると考えた。そのため,購入予定であった機器(前頭前野測定用NIRSのアップグレード版)の変更も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,新型コロナウィルス感染症により,参加予定のすべての学会がオンライン開催となったため,旅費が発生しなかった。また,新型コロナウィルス感染症に伴う来校者制限によって購入予定機器のデモ・詳細説明等を受けることができなかったため,使用機器の購入を見送った。そのため次年度使用額が生じたが,本年度の未使用額と次年度の予算を合算し,業者からの説明後にNIRS関連機器を購入する予定である。
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