本課題では京都大学での全学共通科目「プログラミング演習(Python)」を中心に授業実践を通じて研究を進めてきた.同科目では教科書を作成し授業での利用に供するとともに,京都大学の学術情報リポジトリ KURENAI で公開している.2021 年度には前年度の科目の実施状況を踏まえて単元構成とその順序を見直すととともにプログラミング教育用のフォントを開発し学生の学習の躓きとなる点が改善されるという効果を得た.同フォントについてはその後の評価を通じて 2022 年度に改善を行い,2023 年度版の教科書とともに公開している.また,教科書については公開により累計で 100 万件を超えてダウンロードされているが,これに対する意見を反映させて 2023 年度には同年度版についてプログラミングの導入時に用いている数学的な例題が自学自習時に困難を招くとの意見からその説明を加えるとともに,授業を通じて開発を行った演習問題を収録して内容を充実させた.授業での動画の利用については,教科書では分かりにくいプログラミングのプロセスやプログラムの挙動について授業を Web 会議システムで収録することを通じて蓄積を進めた.2022 年度には Python を実務で利用している技術者 6 名へのグループインタビュー形式でのオンラインヒアリングも実施し大学教育への要望も調査した.2022 年度にはセンサやアクチュエータを利用する領域として,ロボットのプログラミングを取り上げ教育・学習用に開発されたロボットを用いた Python の半日程度の学習プログラムを開発した.このプログラムは,京都府下の工業高校での出前授業で活用し,実践を通じた学習プログラムの確認も行った.また,2023 年度には半日程度の高校生向けの出前授業を実施し,比較的短時間でプログラミングの導入授業が実施できることも確認した.
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