研究課題/領域番号 |
21K02883
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
竹中 真希子 大分大学, 大学院教育学研究科, 教授 (70381019)
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研究分担者 |
辻 宏子 明治学院大学, 心理学部, 教授 (20374754)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生活科 / 科学 / 数理 / STEAM教育 |
研究実績の概要 |
本研究では,世界や社会に対する認識が未分化な発達段階に沿った教科である生活科に着目し,体験や活動を主軸とした,つくること,デザインすることを通した学びの過程に,「理」を見る力,「理」を解く力につながる要素がいかに存在しているかを明らかにした上で,世界や社会を一体 的に捉えるという発達段階の特徴を踏まえて展開される生活科の学びを,数理・科学的な視点から見直し,位置付け直すことで,新たな学びとカリキュラムを提案するものである. 2021年度は,生活科のカリキュラムに潜在する「理」を見る力,「理」を解く力につながる科学・数理的要素の同定を実施した.科学の要素については竹中が担当し,数理の要素については辻が担当した. まず,学術研究にみる小学校生活科における科学的・数理的要素について先行研究を対象として調査した.科学的要素を含む論文は「背景理論」に関する論文,評価指標開発と位置づけを示すことで理科への発展を志向した教授・学習モデルの提案等の「理論研究」,うごくおもちゃや動植物の飼育栽培での「方法研究」や「実践研究」であった.一方,数理的要素については0編で,生活科において算数との関連的な指導が行われている場面を授業実践では目にすることがあるが,学術的な研究として取り上げられてはいないことが明らかになった. 生活科の教科書における幼児期の領域「環境」の数量・図形および低学年の教科算数とのつながりでは,「数と計算」「測定」を中心に,観察の観点として取り上げられる傾向が確認され,数学的な見方へとつながることが示された.領域「環境」の科学につながる内容および中学年以降の学習である理科とのつながりでは,生活科の学習を通して幼児期から児童前期の素朴な気付きが,思考された気付きや認識的な気付きへと高まり,ものの「理」を紐解いて視る力である理科の見方・考え方へとつながっていくことが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に計画していた生活科における科学・数理的要素の同定については,概ねその目標を達成している.学術研究にみる小学校生活科における科学的・数理的要素について先行研究を調査し日本科学教育学会の年会で報告した.また,生活科の教科書における科学的・数理的要素について調査し,日本科学教育学会の研究会で報告した.しかしながら,もう一つ予定していた教員への研修会や研究協力後での授業実践は,新型コロナ感染拡大の影響で実施することができていない.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度後半に予定していた教員への研修会や研究協力後での授業実践は,新型コロナ感染拡大の影響で実施することができていない現状がある.現場が対応に追われた2021年度は,オンラインでの研修会の開催等も提案できる状況ではなかったというのが実状であった.2022年度も,引き続き研修会や授業実践を実施できるよう働きかける.しかしながら,引き続き困難な状況であることが予測される,オンラインでの研修会の開催や教員志望学生らを対象としたカリキュラム開発演習に切り替えることを考慮に入れつつ,研修会や授業実践を試み,「理」を見る力,「理」を解く力の芽を育むという視点から,生活科における指導の際の気づきの促しや活動をデザインし,実施し,評価・分析を行う. 研究の成果は,日本科学教育学会の研究会等で発表するとともに,2021年度の成果を論文としてまとめる.また,2022年度に予定している,「世界や社会を一体的に捉えるという発達段階の特徴を踏まえて展開される生活科の学びを,数理科学的な視点 から見直し,位置付け直す」作業に向けた準備として,これまでの成果を成果を整理する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大により,学会や研究会がオンラインで開催されたため,旅費を執行しかったことがあげられる.同じく新型コロナ感染症の拡大による調整の困難から,予定していた授業実践については,まだ着手できていないことがあげられる.2022年度もコロナの状況次第ではあるが,現時点においては学校現場における実践の目処が立ってはいない.そのため教員志望学生などに対象を変更して研究を遂行すること等を計画している.
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