研究課題/領域番号 |
21K02911
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
野崎 健太郎 椙山女学園大学, 教育学部, 准教授 (90350967)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 幼児教育 / 環境教育 / 科学教育 / いのち / 好奇心 / 栽培活動 / 食育 |
研究実績の概要 |
1. 保育施設における栽培活動の実践 保育施設(大学附属認定こども園)年中(4歳児)および年長(5歳児)を対象に1年を通じた栽培活動の実践を行った。年中クラスの11月から栽培活動を始め、玉ねぎの苗植え、スナップエンドウの種まき、年長クラスの冬野菜収穫の手伝い、2月末~3月初めのジャガイモのタネイモ植え付け、4月の夏野菜の畑の準備、5月頭の夏野菜の苗の植え付け、5月末のジャガイモの収穫、6月頭のサツマイモの苗の植え付け、7月~9月の夏野菜の収穫、9月の冬野菜の畑の準備と種まき、11月のサツマイモの収穫、11月~1月の冬野菜の収穫と続く。 2. 食育実践 収穫した野菜は給食に用いる以外に、玉ねぎパーティー、おいもパーティーを実施し、絵本や紙芝居と組み合わせて野菜を食べることに親しむ活動を行った。玉ねぎパーティーでは、子どもたちはホットプレートで焼いただけの玉ねぎを塩で味つけしたものを食べ、驚いたように「甘い!」と感想を述べ、自然の甘みを実感していた。おいもパーティーではふかしたジャガイモやサツマイモを1~1.5 cm程度に輪切りし、食物アレルギーに考慮するためにマーガリンを用いてホットプレートで焼き、イモの持つ「ほくほく感」や「甘さ」を実感していた。 3. 栽培活動のなかの生命の気づき、自由遊びの自発的展開 子どもたちと栽培活動を行っていると土中や野菜の間から様々な生き物が出現する。大学生は生き物を怖がるが、子どもたちはミミズを手のひらにのせて喜び、お互いに見せ合っている。畑を耕していると大小の石が出てくるが、子どもたちはそれらを集めて勝手に石の山をつくってしまう。サツマイモの収穫時にはつるを引っ張りながら綱引きが始まる。このような子どもの姿は保育職・教師を目指す学生に格好の教材となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はCOVID-19の感染拡大によって研究の推進が危惧されたが、附属こども園との協働によって屋外での栽培活動は順調に実施することができた。栽培活動を通じた子どもたちの行動もじっくりと観察し記録することができた。特に小動物に対する反応は興味深く、私がかつて行った保育者・教員希望者の「虫嫌い」に関する研究との対比が可能になる資料を得ることができた。ただし食育活動については、感染拡大防止の観点から制約があり、十分にはできなかった。 研究成果の発表は、教材開発の面では2本の論文を発表することができたが、栽培活動の教育効果的な面はとりまとめに至らなかった。学会発表も感染拡大防止の観点から控えることになり他の研究者との議論が不十分であった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 栽培活動による教育効果のとりまとめ 2021年度の調査によって、栽培活動を通じた子どもたちの好奇心や探求心の芽生えを実感することができた。この成果を分析し、学会発表、論文執筆の準備を進める。特に幼児と大人の虫嫌いの比較について考察を深めたい。 2. 学校ビオトープを用いた水生生物の観察 附属こども園の子どもたちがよく屋外活動で訪れる大学のビオトープには湧水を利用した池が設置されている。この池には、シオカラトンボ系とイトトンボ系のヤゴが生息している。現在、ヤゴの種類相、個体数、大きさの季節変化を調べている。この結果を紙芝居にまとめ、子どもたちに披露し、それを導入に子どもたちとの採集および飼育実践につなげていくことを目指す。 3. 食育実践 2022年度はCOVID-19感染拡大防止に関する様々な制約が解消されると思われる。そこで栽培活動で収穫した野菜を美味しく食べ、なおかつ生命や物質の循環過程に理解を深めるような調理教材の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はCOVID-19の感染拡大が繰り返し生じ、食育実践と研究出張ができなかった。2022年度は状況が改善すると考えているので、使用を進める。
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