研究課題/領域番号 |
21K02911
|
研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
野崎 健太郎 椙山女学園大学, 教育学部, 准教授 (90350967)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 幼児教育 / 科学教育 / 物質循環 / 栽培活動 / 陸域 / 水域 |
研究実績の概要 |
2022年度もCOVID-19感染拡大防止のため、保育現場における実践研究の遂行は大きく制限された。そのため、保育者のための栽培技術の改良、ビオトープに生息する水生生物の教材化に力を注いだ。以下に成果を具体的に示す。 栽培技術の改良は、ジャガイモ、オクラ、サツマイモについて行った。まずジャガイモの栽培については、およそ10年間に渡り、小学校教員養成課程の生活科の授業で行った実践を基礎に、畑の準備、土づくり、種芋の選び方と事前準備、植え付け、芽かき、花と実の観察、収穫、食べ方までをカラー写真で詳細に解説する紀要論文を作成した。オクラはプランター栽培や袋栽培における土の量と収穫量との関係を調べた。その結果、ある程度までは土の量に比例して収穫量が増加するが、ある時点で頭打ちになることがわかった。この結果から必要な土の量を正確に判断することが可能になった。サツマイモは通常、苗を購入して植え付けるが、それでは子どもたちに生命の連続性が伝わらない。そこで種芋から効果的に苗を発芽させる条件について検討した。太陽の直射光に含まれる紫外線が発芽を抑制させることがわかったため、効果的な種芋の植え付け方を検討した。 水生生物の教材化は、シジミガイとヤゴ(トンボの幼生)を材料にして行った。シジミガイは簡便な科学実験であるWinkler法を用いた呼吸速度の測定を行い、子どもたちの目に見えない呼吸を可視化することができた。ヤゴは複数の学校ビオトープで採集を行い、幼児~児童向けのヤゴ図鑑の制作を行った。以前、栽培活動を行う畑で見られる虫図鑑を作成したところ、子どもたちの虫に対する興味が大きく増進された。今回もヤゴ図鑑をこども園の子どもたち(5歳児)に見せると大いに関心を抱き、早速、採集に出かけるようになった。幼児教育における可視化の重要性が再確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主要な実践場所は勤務先の附属こども園である。2022年度もCOVID-19感染拡大への警戒感は極めて強く、子どもたちとは、断片的な栽培活動や採集活動、そして食育活動を行うに留まった。そのため当初の研究計画に比して「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、栽培活動と雑草との関係を子どもたちと一緒に考えながら実践し、雑草の存在が良い土づくりに欠かせないということを、絵本という手法で可視化することを目指す。現在、都市部では栽培活動に伴う残渣や抜いた雑草はゴミとして畑の外に排出している。その結果、雑草や落ち葉に含まれる栄養分が流失し、畑の貧栄養化が生じてしまう。そこで、畑にあるものは小さな生物の力を借りて堆肥化し、土として畑に戻すことの重要性を子どもたちに理解してもらう。小さな生き物は子どもたちが大好きなダンゴムシを用い、彼らが抜いた雑草や落ち葉を食べて土にしていく過程を簡単な飼育実験で体験させる。その体験から雑草はゴミとして捨てるものではなく、それらを食べる小さな生物のご飯であり、畑の土を育てる重要な資源であることに気づかせる。子どもたちの気づきは雑草とダンゴムシを主人公とした絵本にまとめ、物質循環の理解の定着を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度もCOVID-19が2類指定のため研究活動が十分に実施できなかった。年度後半からはかなり状況は好転したが、わずかな繰越金が生じてしまった。この繰越金は2023年度の物品費として栽培活動の資材購入に用いる。
|