研究課題/領域番号 |
21K02916
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
馬場 一隆 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (10192709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光素子 / 光システム / 光学実験教材 / 遠隔授業 / 実験キット / 光計測 / 偏光 / 複屈折 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ブロック状光素子を用いて,自宅等においても中等・高等教育機関の実験室等で行われるのと同等の実験・実習教育を受講することができる遠隔教育に利用可能な光学実験教材を開発することにある。申請者は,これまで受講者がその機能を直感的に理解でき,取扱いが容易で,小型・軽量,かつ安価に提供することができる新しい光学実験教材として,ブロック状光素子を提案・開発し,その有効性を検証してきた。ブロック状光素子の基本的な形状は,立方体もしくは直方体であり,光が透過する面は,すべて同一の大きさの正方形(本研究で試作した素子は20mm×20mm)に統一されている。原則的に光のビームがこの正方形断面の中心を通るように定めることで,各光学素子の配置や光軸の調整を容易にしている。 本年度は,先ず,遠隔教育で自宅等で用いられることを念頭に,素子の表面保護のための方策について重点的に検討を行った。多くの光学素子は,光が通る面を指で直接触れたりして指紋がついたりすると特性が劣化するものも多く,教員等の直接監督下から離れて使用させるには,なんらかの方法で表面を保護する必要がある。このため樹脂板等を用いた脱着可能な保護カバーの開発を行ったが,薄い樹脂板には製造工程の中で複屈折を持つものも多いので,同一ロッドの材料から切り出されたシートの光学軸がお互いに直交するように組み合わせることで,複屈折を相殺して測定時に保護シートの影響が出ないようにすることに成功した。また,素子の強靭化の検討にも着手し,ブロック玩具の土台の上に実権系を構築できるようにして,安定な測定ができるようにした。また,簡単な分光測定や,液体の糖度を測定できる実験キットの開発も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の過程で見出された細かな問題点も順調にクリアしできている。例えば,保護シートの複屈折が偏光を用いる実験に大きな影響を与えるが,2枚の保護シートを光学軸がお互いに直交するように貼り合わせることで複屈折を相殺して,その影響を排除することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
ブロック状光素子は,形状や重量,経済性の面で遠隔授業に対応し得る特質を有するが,実際に遠隔教育に使用するには,①学生本人あるいは運送業者による運搬・輸送の際によくある「手荒い扱い」を受けても破損しない程度に,素子を強靭なものとすること,②多くの光学素子は,光が通る面を指で直接触れたりして指紋がついたりすると特性が劣化するものも多く,教員等の直接監督下から離れて使用させるには,なんらかの方法で表面を保護する必要があることが重要であると考え,本研究を進めた。 令和3年度は,②について進捗がありほぼ課題を解決するめどがついたが,①については途上なので,今後は,個々の素子について,振動・衝撃に弱い部分を実験的に洗い出し,適切な接着方法の選択や接着部の形状の工夫,樹脂の充填等により,運搬輸送に耐えられるよう強靭化を図る。また,素子を収納する運搬用ケースについても試作を行う。 それらを行った上で,遠隔教育用テキストを作成して,仙台高専の学生に対して第5学年に開講されている「光工学」の授業の中で,希望する学生に対面授業によるガイダンスの実施後,開発した素子を自宅等で実際に使用して実験を行わせて実証的検証を行ない,実際に遠隔授業に使用できるところまで完成度を向上させることを到達目標としている。さらに,十分な性能が得られたなら,全学年で開講されている「総合科目B」の中の「学生による自主探求」でも使用させて,PBL教育における有効性の検証も行いたいと考えている。 なお,本研究は,申請者の単独研究であり,研究分担者はいない。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、研究のために使用している実験室のある建物が、2022年度に改修されることとなり、より狭い実験室に仮移転することになったため、一部の購入を予定していた工具などの物品の購入を見送った。また、COVID-19の蔓延のため、予定していた出張を取りやめた。
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