本研究では,高周波回路技術者を短期間で効果的に育成するための3次元回路設計学習システムの開発に取り組んでいる。本年度は昨年度の教育実践の結果を踏まえ,学習システムの改良を行うとともに,その効果検証を実施した。具体的には,学習システムのe-learning教材部については,その一部を改良し,操作編と基礎編からなる24本の短い動画に再編成した。また,疑似実験システム部については,チップ部品の3次元モデルの見直しを実施し,製品に対する近似精度を向上させた。改良を加えた学習システムで昨年度に引き続き学生実験を実施した。結果,従来手法ではインピーダンス変成器及びチップ部品の高周波帯での活用の学習までであったが,本手法の導入により,上記の内容に加えて,(1)伝送線路,(2)スタブ回路,(3)コンテスト方式でのフィルタとインピーダンス変成器の複合回路の設計実習,を同じ時間で実施可能な方法が構築できた。また,この実習において小型設計に焦点を当てることで,システムで可視化した電磁界を用いて寄生成分の影響を含む回路設計の知識が,より効果的に学習可能となることがわかった。さらに,3次元回路設計の知識の習得に開発した学習システムを活用した4名の学生が,回路設計コンペティション(Joint Workshop Thailand-Japan Microwave (TJMW) & Asian Wireless Power Transfer Workshop (AWPT) 2023)に参加し,3名の学生が入賞することができた。最後に,本研究の遂行で得られた関連の研究成果を大会等で発表した。
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