研究課題/領域番号 |
21K02926
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 教授 (90319377)
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研究分担者 |
伊藤 崇達 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (70321148)
笠 潤平 香川大学, 教育学部, 教授 (80452663)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自己調整学習 / アクティブ・ラーニング / 学習指導モデル / 物理教育研究 / 認知発達 |
研究実績の概要 |
現在,日本の物理教育におけるアクティブ・ラーニング(AL)型授業において,学習者の物理学習に対する動機づけが低く,討論が活発化しないことが高校・大学共通の課題となっている。本研究では【認知促進】の理論に基づく認知的支援および【自己調整学習】の理論に基づく情意的支援による動機づけの向上を目指すとともに,通常の授業から家庭学習や定期テストといったすべての学習活動において,<動機づけ><学習方略><メタ認知>の自己調整学習の3つの要点への能動的な関与を促す,物理の学習指導モデルの開発,普及を目指している。 研究初年次となる本年度は,当初の計画にしたがい,次の3つの観点で研究を行った。 ①研究協力者の高校および本学の生徒・学生の物理学習に対する,(1)「自己調整学習」の3要素(動機づけ,学習方略,メタ認知)の状況,(2)「科学的推論課題」による認知発達段階および科学的推論力の状況,(3)「力学概念調査」による力学概念の定着状況,(4)その他,学習者の情報(基本情報,履修状況,好嫌度,授業形式,等)の実態調査を行い,自己調整学習における3要素の実態と認知発達および物理概念の状況の関係を調査した。 ②米国物理教育研究で開発されたAL型授業の理念および展開と「自己調整学習」および「認知促進」の理論との整合性について文献調査を中心に検討した。 ③上記①の各視点(1)-(4)の実態調査結果を分析し,課題を見出し,さらに②の調査結果をふまえて,個別の課題を改善する手法を実践的に検討した。 研究協力校および本学における授業実践を通じて検討した結果,(1)認知促進の理論に基づく認知的(科学的推論力)支援が情意面(動機づけ)を支援する可能性,及び(2)自己調整学習の実現に向けて「学習方略」の獲得および「メタ認知」を促す支援としての「宿題(家庭学習)」の可能性を示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の研究協力母体となる「アドバンシング物理」研究会は,コロナ禍により,対面では開催できなかったが,オンラインにて実施する体制を整えることで開催した。また,本年度の研究の中心である各種実態調査についても,コロナ禍により高校2校,大学1校のみとなったが,研究協力者の協力により,調査対象の生徒・学生の数を確保したため,調査の信頼性は担保できた。 以上のように,コロナ禍により,研究方法および調査規模に多少の変更はあったものの,当初計画していた次年度の授業実践の本格実施に向けた知見を得ることはできている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に,得られた知見を基に,情意面への支援を強化したAL型物理授業を開発し,大学および研究協力者の勤務高校にて,授業実践を行う。動機づけの状況および物理概念の理解度の評価として,昨年度と同様に,事前・事後で上記【概要】①-(1)(3)による質問紙調査を行い,授業前後の変容を量的に分析する。また,質的評価のために,授業の録画および参加生徒へのインタビュー調査を行う。 なお,当初計画では夏休みに,ボランティアの高校生を募り,開発授業による公開講座を開催する予定であったが,新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑み,延期を予定している。ただし,各校で実践した授業のビデオを「アドバンシング物理」研究会で共有し,開発授業の評価および検討を行う。また,その成果を関係学会にて発表し,全国の物理教育関係者との意見交換を行い,開発した授業プランの修正を行う。 さらに,年度の後半には,継続的な宿題(家庭学習)を用いた認知的,情意的支援を組み込んだ,ALを促す単元学習プランを検討,開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により,当初予定していた旅費を使用する機会がなくなり,また研究協力者の勤務校における授業実践の機会の減少により教材費としての物品費の使用が減ったため,次年度使用額が生じた。 なお,次年度は,コロナ禍においても実施可能な研究体制を整えることから,翌年度分の助成金と合わせて,今年度使用予定であった用途に使用する予定である。
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