研究課題/領域番号 |
21K02927
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 俊哉 九州大学, 科学技術イノベーション政策教育研究センター, 准教授 (90345140)
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研究分担者 |
小林 良彦 大分大学, 教育学部, 講師 (30815353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 科学コミュニケーション / サイエンスカフェ / 科学技術・イノベーション基本計画 / 科学技術社会論 / STSステートメント / サイエンスアゴラ |
研究実績の概要 |
本研究事業初年度の2021年度は、研究者個人向け質問票調査を実施した。本調査は、研究代表者が所属する国立大学法人九州大学の理系教員と文系教員の合計2,245人(2021年3月現在)に対する質問票調査として実施した。その結果、理系教員からは384件の有効回答を回収し(回収率26.1%)、文系教員からは140件の有効回答を回収することができた(回収率18.1%)。集計結果(第一次集計として理系教員回答者を集計)から、次の知見を得ることができた。九州大学の理系教員回答者の「科学コミュニケーション活動」に対する認知度は「知っていた」と「よく知っていた」の合算値が39.1%で全体の4割弱であり、一方「名前を聞いたことはあるがよく知らなかった」と「知らなかった」の合算値は60.6%であった。この結果から、「科学コミュニケーション活動」は九州大学理系教員回答者の過半数以上から十分な認知を得ていないことが判明した。その一方で、「近い将来科学コミュニケーション活動に参加したい」という希望-この設問は科学コミュニケーション活動の内容を明示した上で回答していただいた-を表明した回答者は72.4%と7割以上の回答者が肯定的な意向を示した。以上は本調査で得られた新知見の一部である。 また当年度は、2021年9月7日に開催した九州大学科学コミュニケーション推進グループ公開シンポジウム「九州大学×科学コミュニケーション 伝える喜び、伝わる喜び ~双方向コミュニケーションの場を造る~」において研究代表者が上記調査についてレクチャーを行った他、同年11月6日に科学技術振興機構(JST)主催『サイエンスアゴラ2021』にて「STSステートメント・オンラインサイエンスセッション」、2022年3月5日に「STSステートメント・オンラインサイエンスカフェ」を開催するなど、科学コミュニケーション実践を活発に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症に対応した緊急事態宣言とまん延防止等重点措置などに伴う行動制限により研究代表者(九州大学勤務)と研究分担者(北海道大学勤務)の間で研究推進のための十分なコミュニケーションが取れなかった。また研究分担者が2021年度の途中で勤務先が北海道大学から大分大学に異動したため、研究推進が中断した等の事情により、当初計画より若干の遅れが生じ研究費の執行も十分にできなかった。しかしながら研究分担者の新任地が研究代表者の勤務地の隣県であるため、今後は研究推進のためのコミュニケーション円滑化が期待でき、2022年度に遅延は取り戻すことは十分に可能と判断している。 また研究代表者の場合、当初の予定では、2021年度内に研究者個人向け質問票調査を集計・分析まで完了する予定であったが、研究支援大学院生の所属研究室で新型コロナウイルス感染症の感染者が発生し、支援大学院生も濃厚接触が懸念されたため、一旦作業を中止し作業場も3週間に亘って閉鎖した。このため若干作業が遅延した。しかし質問票の回収は、ほぼ当年度内に完了しており、集計結果の統計的分析は新年度に持ち越しても研究全体のスケジュールに影響は少なく、こちらも2022年度に遅延を取り戻すことが十分に可能と研究代表者は判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本調査研究事業2年度目の2022年度は、研究者個人向け質問票調査集計結果の統計的分析、他大学での研究者個人向け質問票調査の実施を予定している。他大学としては、研究分担者が在籍する国立大学法人大分大学を検討している。また、国公私立大学等の国内研究機関合計150件に対する質問票調査も当年度内に実施する予定である。さらに初年度に実施した科学技術振興機構(JST)主催『サイエンスアゴラ』における「STSステートメント・オンラインサイエンスセッション」の出展、「STSステートメント・オンラインサイエンスカフェ」の開催等を本調査事業の主要研究テーマである科学コミュニケーションの実践活動として、また本研究事業の広報の場として積極的に活用展開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額の内、236,653円は研究分担者の直接費の残額である。研究分担者は、2021年9月末まで北海道大学・高等教育推進機構に勤務していた。研究代表者が勤務する九州大学と北海道大学とで研究打ち合わせや現地調査、学会発表などのための旅費として福岡・札幌間の航空券代等を15万円措置していたが、新型コロナウイルス感染症に対応した緊急事態宣言と「まん延防止等重点措置」などに伴う行動制限のため、2021年度内は出張等が実施できなくなった。そのため旅費分が残額となった。また研究分担者は、年度の途中で北海道大学から大分大学へ異動したため、研究支援者雇用のための人件費等執行も十分にできない条件の下にあった。こうした事情により、研究分担者は2021年度内は予算執行が困難な状況にあった。しかし2022年度は、研究分担者の新任地の大分大学での研究者個人向け質問票調査実施の調査実費、収集データ分析のための統計解析用ソフトの購入を予定しており、2022年度分として請求した助成金と併せて適切な執行を進める予定である。
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