2023年度には、アノオンシツを軸にした実践研究をアカデミアや一般向けに広める活動を進めた。アノオンシツの背景や実践事例を2023年12月の韓国科学技術学会、2023年12月のTAG2023で発表した。 また、気候危機に関するリサーチとして斜里で流氷をテーマにした撮影、アーティストや研究者への取材を行うと同時に、2023年9月から11日まで韓国光州アジア文化殿堂で開催された企画展に、Drift Collectiveというアーティストグループを結成し、作品展示やアーティストトーク、図録にインタビュー記事を掲載した。さらに、2024年2月には北方圏国際シンポジウムで流氷を作品にするアーティストの試みを自分の事例も含めて発表した。 そのほか、アノオンシツにてサイアノグラフという青写真技術を用いて未来の生態を想像する「空想植物図鑑」など、植物を軸に未来のくらしを想像するワークショップを開催した。 アノオンシツの実践研究で、気候危機や科学技術の進歩による自然との距離を考えるため、STEAM教育との可能性を多様な方法で試みた。STEAM教育の中でも、アート作品を解釈する時の科学の役割や、科学者へのアート作品や実践の紹介など、アートとサイエンスを様々な立場で行き来しながら交流することで、その結果作られたコンテンツを体験することが教育につながる、複合的な構造があることが見えてきた。また、科学者とアーティストがお互い好奇心を持ち続けられるため、間でつなぐコミュニケーターの役割が大事であることも分かった。 科学技術の進歩や、現代アートの可能性は今後も進むと考える。その中でアートや科学の現場の境界で、行き来しながら共に学べる場づくりのニーズは高まるだろう。アノオンシツのような、共に考えられる開けた場を軸に、今後も実践研究を進め、主体的に知識を活用し、創造できる場を目指したい。
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