本研究課題は,潜在連合テスト(Implicit Association Test;IAT)を用いてスマートフォン依存傾向の評価ができるかどうかを検証すると共に,スマートフォン依存リスクの高い者を検出するための客観的基準を検討することを目指すものである。2023年度は,IATによるスマートフォン依存傾向の評価に関する1つの実験(研究4)を行った。 研究4では,新たに,他の世代よりもスマートフォン依存の深刻化が指摘されている高校生サンプルを対象とし,IATによるスマートフォン依存傾向の評価と自己報告による顕在指標との関連を検討した。調査会社の保有する高校生モニター807名に対してウェブ実験用のURLを送付し,スマートフォン上でのIATの実施とアンケートへの回答を求めた。IATには,研究1においてスマートフォン依存傾向の程度を反映すると想定されたIdentity IATを用いた。 その結果,IATによる潜在指標と顕在指標の一部の側面との間に有意な正の関連がみられた。したがって,高校生においても,IATによる潜在指標は,スマートフォン依存傾向を反映することが明らかとなった。また,関連がみられた側面は,依存の六つの構成要素のうち,突出・離脱症状に該当することから,IATによる潜在指標は,高校生におけるスマートフォンによって自身の思考・感情・行動が支配されている程度や,スマートフォンを使えないことへの不安を反映すると考えられる。
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