研究課題/領域番号 |
21K02965
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
田村 達 岩手県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (10515109)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 共感抑制 / 非人間化 |
研究実績の概要 |
本研究は、被害者の非人間化を通じた共感抑制の過程を解明してモデル化し、深刻な差別や葛藤・紛争の抑止に必要な条件を提示することを目的としている。本研究では相手に対する共感的反応が阻害される二つのポイントに焦点を当てるものとして、その第一を対象の苦痛に関する手がかりを取り出す時点であると仮定しているのだが、ここに非人間的ラベリングが影響を及ぼすと考えている。当初は研究1として偏見と武器の誤判断との関連についての実験(Payne, 2001)に倣ってこれを検討する実験を計画していたため、今年度はまずこの実験手続きの詳細検討と実験実施準備から開始した。Payne(2001)の研究では判断における自動的過程と統制的過程とを分離する手続きを用いており、これを本研究に適用するために提示する刺激と反応との対応関係を検討したところ、実験刺激の作成・選定に時間がかかることが分かり、実験開始が遅れることが予想された。そのため別の研究手法への変更も視野に入れながらその他の先行研究を検討したところ、苦痛表現の知覚に関する研究で本研究に利用可能な表情刺激のデータベースがあることを確認できた。これを用いるならば費用・時間といったコストの削減が可能であり、現在これを利用して実施する研究計画を立てている。また、同じく質問紙調査によって社会的苦痛の知覚についての人種による差異を検討している先行研究が確認できたため、これを応用して当初の研究の展開とすることで、PCによる実験に先行して質問紙調査を行う計画を立てている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では当初、研究1として偏見と武器の誤判断との関連についての実験(Payne, 2001)に倣った実験を計画しており、Payne(2001)の研究を本研究に適用するために提示する刺激と反応との対応関係を検討したところ、実験刺激の作成・選定に時間がかかることで実験開始が遅れることが予想された。具体的には、当初は実験刺激として既存の顔写真データベースから写真を購入するか、あるいは協力者の顔写真を撮影し、それを加工して使用する予定であったが、適切なデータベースが見つからず、また協力者の選定・依頼も難航した。そのため別の研究手法への変更も視野に入れながらその他の先行研究を検討したところ、苦痛表現の知覚に関する研究で本研究に利用可能な表情刺激のデータベースがあることを確認できた。これを用いるならば費用・時間といったコストの削減が可能であり、現在これを利用して実施する研究計画を立てている。また、同じく質問紙調査によって社会的苦痛の知覚についての人種による差異を検討している先行研究を確認できたため、これを応用して当初の研究の展開とすることで、PCによる実験に先行して質問紙調査を行う計画を立てている。従って、当初想定した研究1は実施されておらず、現状として準備段階であるため、計画は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初想定した研究1について、上で述べたデータベースの表情刺激を用いてPayne(2001)の実験を応用する形で実施できるように、改めて実験手続きを吟味し、実施する。また同時に、社会的苦痛知覚に及ぼす非人間化の影響に関する質問紙研究を実施する。加えて、当初想定した研究2についても手続きの詳細の確認と準備を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画からの遅れがあるため、研究1の実験に必要な実験用PCやソフトウェア類、あるいは研究協力者・参加者への謝金・謝礼に必要なものとして令和3年度に請求した助成金が使用されていない。また、実験刺激として購入する予定であった表情写真を用いる必要がないと考えられるため、そのための助成金も使用していない。令和4年度には、令和3年度に請求した助成金と合わせて、当初予定していたようなPCを用いた研究1と追加で計画している質問紙研究を実施する予定である。
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