研究課題/領域番号 |
21K02968
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
安野 智子 中央大学, 文学部, 教授 (60314895)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 政治的知識 / 海外への知識 / 情報接触 / ソフトパワー |
研究実績の概要 |
(1)世界各国への印象と情報接触 2023年度は予備調査として、30か国についての印象と情報接触をそれぞれ5件法でたずねた。因子分析(最尤法、プロマックス回転)の結果、印象については、①ヨーロッパ諸国+アメリカ+オーストラリア+ウクライナ、②南米・中東・アフリカ、③東南アジア+インド+台湾、④東アジア(中国・北朝鮮・ロシア・韓国)の因子が抽出された。香港とシンガポールはこれらの因子には含まれなかった。情報接触については、①南米・中東・アフリカ、②ロシア・ウクライナ・北朝鮮・中国・韓国・アメリカ、③ヨーロッパ+台湾、④東南アジアの4つの因子が抽出された。なお、中国・ロシアについては、情報接触量と印象が弱い負の相関にある。 (2)世界各国に関する知識の現状 SA,MA,FAの形式で、ウクライナ、モロッコ、リビア、アメリカ、中国に関する質問を行った。結果の一部は次のとおりである。①「ウクライナにおけるロシア系人口の割合」の正選択率10.6%、「わからない」48.5%。②モロッコの首都の正選択率16.6%、「わからない」55.1%。③「リビアの主要な宗教」(正選択率21.5%)「リビアは現在2つの政府に分裂している」(正選択率18.4%)「リビアの首都」(正選択率20.3%)、すべての選択肢について「わからない」50.8%・④「アメリカの大統領選が2024年に行われる」(正選択率40.5%)、「バイデン大統領は民主党」(正選択率50.3%)、「アメリカ大統領の任期は最大で2期」(正選択率35.2%)、すべての選択肢について「わからない」31.9%。⑤「英国首相の名」を自由回答で正解できた回答者19.8%。⑥「中国の輸出相手国第1位はアメリカ」(正選択率33.3%)、「2022年の中国のGDP は日本の約3倍」(正選択率14.2%)、すべての選択肢について「わからない」も52.5%。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年は、コロナ禍で海外渡航や国際交流が低調であったため、本研究予算以外での予備調査にとどめた。2023年にはコロナ禍がやや収束したため、予備調査を実施することができたので、この結果を踏まえて2024年度に調査を実施する。当初の予定では1年ずつ地域を分けることを考えていたが、比較可能性を考慮すると、同時期に行ったほうが良いと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、予備調査の結果を踏まえて、以下の方針で調査を進める。 (1)ウェブ調査の形式でも、先行研究の知見と同様、政治的知識の正解率は低い。検索すればすぐ正解は得られるものもあったが、回答者は必ずしも正解を調べて回答するわけではないようだ。また、国によって知識の偏りがある(たとえば、中国については、経済的な知識は比較的乏しい)。この「知識の偏り」を考慮した調査票作成が必要である。(2)回答者の印象は、①欧米諸国、②日本から遠い国(中近東、南米、アフリカ)、③東南アジア(インド・台湾含む)、④コンフリクトも抱えた関係の深い近隣の東アジア諸国、の4因子に分かれる。ただし印象と情報接触が完全に相関しているわけではなく、コンフリクトを抱えた国については、情報接触量が増えるほど印象が悪くなる可能性がある。 なお、この予備調査の後にガザ地区での紛争が始まった。2024年度の本調査では、ガザ地区に関する設問も含める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度までコロナ禍で国際交流が途絶えがちであったことから、コロナ禍が収束しつつあった2023年度に予備調査を行った。この結果を踏まえて、2024年度に予定していた調査を実施する。比較可能性という観点では、同時に行うほうが望ましいためでもある。
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