研究実績の概要 |
本研究では,感情制御における目標の志向性とネガティブな出来事を経験した際に用いられる対処方略が抑うつに影響を与える背景にある認知過程を究明することを目的としている。令和3年度は,Rusk et al. (2011) で作成された感情制御目標の個人差を測定する尺度の邦訳を行った。感情制御目標の個人差を測定する尺度は,目標志向性を測定する既存の尺度 (Elliot & Church, 1997; Dykman, 1998) の一部を感情制御に対応する形に修正することにより作成されている。目標志向性に関する尺度については対応する日本語版の尺度も作成されているため (黒田・桜井, 2001; 田中・山内, 2000),これらの項目を参考にしながら,Rusk et al. (2011) で作成された項目の邦訳を行うこととした。現在,原著者に日本語への翻訳の可否について確認をとり,翻訳作業を進めている。なお,尺度翻訳の手続きは,ISPOR (lnternational Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research) タスクフォースによる報告書の尺度翻訳の手続き (稲田, 2015; Wild et al, 2005) に準拠して実施している。また,並行して,感情制御目標に関連する概念であるマインドワンダリングに関する暗黙理論の個人差を測定するための尺度であるthe theories of mind wandering (TOMW) scale (Zedelius et al., 2020) の邦訳を行った。その結果,原版の尺度と概ね等しい構造の1因子が抽出された。現在は,作成された尺度の信頼性・妥当性を検討するための縦断調査を実施している。ここで得られた結果は,令和4年度に開催される各学会で報告する予定である。
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