| 研究実績の概要 |
心的視点取得とは,相手の立場に立って相手の気持ちを想像・理解することを指し,円滑な社会生活に肝要である。本研究課題は,その心的視点取得を効果的に促進する方法を開発することを目的としている。 近年, 心的視点取得は,相手の位置からの見え方を想像する空間的視点取得と, 自分の身体表象を相手の視点の位置まで移動させるという心的シミュレーション (以下,仮想的身体移動) を行うという点で共通する可能性が指摘されている。そこで研究目的を達成する第一段階として令和3年度は, 空間的視点取得を促進することが知られている操作を心的視点取得にも適用し, 心的視点取得が促進されるかについて実験的検討を行った。具体的には,空間的視点取得では, 対象と向き合う角度の乖離が小さくなるほど仮想的身体移動が容易となり反応時間が短縮することが示されている。そこで, 心的視点取得時にも仮想的身体移動が生じているなら, 対象と向き合う角度が小さくなるほど心的視点取得が容易になると仮説を立てた。そして, 相互作用する2人の心的経験が乖離するタッピングパラダイム (Griffin & Ross, 1991)において 対象と向き合う角度を0度(正対)条件と180度(横並び)条件とを設け, 両条件の心的視点取得の正確さを比較した。その結果, 0度(正対)条件では, 180度(横並び)条件よりも, 心的視点取得が正確になることが示された。 また, 正対条件において対象への親密性が高まるという結果は,仮想的身体移動を伴うことでその対象への親密性が高まるというErle & Topolinski (2017) の結果と一致するものであった。したがって, 0度と180度の2条件しか比較できていないといった限界はあるものの,心的視点取得が空間的視点取得と同様に仮想的身体移動に支えられている可能性を示したといえる。
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