研究実績の概要 |
心的視点取得とは,相手の立場に立って相手の気持ちを想像・理解することを指し,円滑な社会生活に肝要である。 本研究は,その心的視点取得を効果的に促進する方法を開発することである。近年, 心的視点取得と相手の位置からの見え方を想像する空間的視点取得とには, 自分の身体表象を相手の視点の位置まで移動させるという心的シミュレーション (以下,仮想的身体移動) を行うという共通基盤が存在する可能性が指摘されている。そこで研究目的を達成する第一段階として,令和5年度は, 空間的視点取得を促進することが知られている操作を心的視点取得にも適用し, 心的視点取得が促進されるかについて実験的検討を行った。具体的には,空間的視点取得では, 対象の方向へ身体を倒す,もしくは足を出すなどによって仮想的身体移動が容易となり, 反応時間が短縮することが示されている。そこで, 心的視点取得時にも仮想的身体移動が生じているなら, 対象方向へ身体を傾けることにより心的視点取得が容易になると仮説を立てた。 そして, 相互作用する2人の心的経験が乖離するタッピングパラダイム (Griffin & Ross, 1991)において,対象の方に身体を傾ける群と対象と反対側に身体を傾ける群とで操作し, 両条件の心的視点取得の正確さを比較した。現在,結果の分析を進めている。
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