| 研究実績の概要 |
心的視点取得とは、相手の立場に立ち、その気持ちを想像・理解する能力を指し、円滑な社会生活を営む上で極めて重要である。本研究課題の目的は、この心的視点取得を効果的に促進する方法を開発することであった。令和6年度は、国際共同研究(A)の助成を受け、リヨン神経科学センターにおいて、Yves Rossetti氏と共同で、本申請課題のさらなる発展に取り組んだ。 具体的には、令和4年度から継続して検討している課題「空間的視点取得を促進することが示されている方法(2者の向き合う角度差を小さくする)を適用することで、心的視点取得が促進されるかどうか」について、より精緻な実験(角度条件およびサンプル数の増加、心的視点取得課題の変更)をフランスにて実施した。予備実験の結果、身体的位置──すなわち相手と向き合う身体的角度差が小さいほど、心的視点取得がより効果的に促進される傾向が確認され、令和4年度に日本で得られた実験結果の一般性および頑健性が裏付けられた。また、令和5年度に開始した、空間的視点取得能力と心的視点取得能力との相関を報告した先行研究(Erle and Topolinski, 2015)の追試も完了しており、現在、論文投稿の準備を進めている。 期間全体を通じた研究成果から、本研究課題の中心的な問いであった「心的視点取得と空間的視点取得には、自分の身体表象を相手の視点の位置まで移動させるという心的シミュレーション(以下、仮想的身体移動)という共通基盤が存在する可能性」については、少なくとも相手との角度差という観点において、仮説を支持する複数の結果が得られたと言えるだろう。ただし、心的視点取得と空間的視点取得の共通基盤に関しては未解明な部分も多く、相手との角度差以外の観点からの多角的な検討が今後求められる。
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