研究課題/領域番号 |
21K02993
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大芦 治 千葉大学, 教育学部, 教授 (30289235)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学校心理学 / 教育心理学 / 心理学史 |
研究実績の概要 |
本年度は以下の3項目を重点的に行った。初年度ということもあり文献の収集、整理が中心となった。
(1) 学校心理学の歴史に関する史料となりうる雑誌の収集・・・これについては所属機関図書館を通して内外の大学図書館などから10点ほどの文献を収集した。 (2) 学校心理学の歴史に関する研究論文の収集・・・これらについても所属機関の図書館を通して内外の大学図書館などから80点ほどを収集し、分類整理を行った。当初より、学校心理学の歴史に関する研究は①Witmerを創始者とし、問題を抱える児童生徒を個別にサポートすることに重きをおく流れと、② G,S.Hallの児童研究運動の流れを汲み児童の発達の全般的理解に重きを置く流れ、との2つがあることが想定されていたため、まずは、その枠組みに沿って文献のカテゴライズ、整理を行った。その結果、そこから検討すべきいくつかの課題があることが明らかになった。 (3) 学校心理学と教育心理学との棲み分けに関する研究・・・両者は独自の歴史をもつべつりょういきであるというのが研究者代表の考えだが、それを明らかにするため両領域の代表的なジャーナル(”Journal of School Psychology”"Journal of Educational Psychology")の掲載記事のキーワードを分析した。その結果、1960年代になり両領域が概ね認知されるようになった段階では、上記(2)の①すなわちWirtmerの流れが学校心理学、②すなわちHallの流れが教育心理学と呼ばれるものにそれぞれ対応していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている理由は以下の2つが考えられる。 (1)研究者代表の所属する千葉大学では心理学系の代表的な電子ジャーナル”Psycharticles”の機関購読が打ち切りになり、主要なジャーナルの記事でさえも、多くは他大学の図書館から取り寄せざるを得ない状況になっている。これに予想以上の時間が費やされた。さらに海外取り寄せについてはコロナ禍の影響で受付を停止している場合などもあり、まず、受付可能機関を探すだけでも難儀を極めた。その結果、当初、想定したほど進まなかったということがある。 (2)また、「学校心理学」と「教育心理学」との領域の棲み分けを明らかにした前記「研究実績の概要」の(3)の研究では、今回、対象とした1960年代後半のものだけで街頭論文が700本ほどあり、また、それらにアブストラクトやキーワードが適切に掲載されていなかったことなどもあり、場合によっては本文に目を通さざるを得ないことも多かった。そのため予想以上の時間が費やされたこともあり、進捗状況が非常によいとはいえない理由である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、昨年度の研究成果について発表をしたいと考えている。「研究実績の概要(3)」の「学校心理学と教育心理学との棲み分けの成立史に関する研究」については、本年、9月に開催される日本教育心理学会総会で発表予定である。 今後の研究としては、この「学校心理学と教育心理学の棲み分けの成立史」についてもう少し重点的に検討してみたい。この点は当初の研究計画ではあまり考慮していなかったが、1920年代から1950年ごろにかけてのアメリカの学校心理学の歴史に関する諸研究(たとえば、T.Faganなどによる一連の研究)にもまとまった記述がなく、未着手の領域であり事が明らかになったからである。 また、この学校心理学と教育心理学の棲み分けを考えてゆくうえでA.Gesellについての研究も欠かせない。なぜなら、GesellははじめてShool Psychologistというタイトルを得たその人であるが、実は、Hallの門下生であり、学校心理学側ではなく教育心理学側の人物だからであり。このGesellの業績を検討することも、学校心理学と教育心理学の棲み分けの成立史を理解するうえでっポイントとなってくるのではないかと思われる。
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