研究課題/領域番号 |
21K03010
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
岡本 依子 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (00315730)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 親子関係 / 縦断研究 / 他者性 / 母親観 / 父親観 |
研究実績の概要 |
文化化とは、子どもが人とのかかわりのなかで、行為や出来事の文化的意味を身に付け、それを使いながら再構築していくプロセスであり、子どもの発達そのものといえる。本研究では、大人とのかかわりのなかで顕在化する日常的リスクに着目することを通して、子どもの文化化を縦断的(国内長期縦断研究)および横断的(海外のECEC研究)に捉えようとするものである。 当該年度は、国内長期縦断研究において分析を進めた。まず、妊娠期の胎動日記および誕生後の親子コミュニケーションのデータを再分析・再検討した。妊娠期には、胎動によって胎児との一体感を感じる一方で、不快感情、わからなさ、別個体という感覚を経験し、誕生後には、コミュニケーション相手として乳児の不完全さから非対称性を経験する。身体的な有限性と子どもの他者性という日常的リスクを経るプロセスとして親子の発達を捉えなおした。 また、母親/父親が妊娠期から子どもが二十歳になるまで母親観、父親観および夫婦観を検討した。母親37名、父親15名を回答者とした文章完成法データのうち、「母親」「父親」「夫婦」および「家族」を語幹とした回答文2,585文を対象とし、KH Coderを用いて分析した。その結果、母親の母親観として「一緒(に)成長」「元気(で))健康(な)子ども」といった肯定的側面、あるいは、「責任(が)重大(で)疲れる」という負担感が表れていた。さらに、母親の父親観として「忙しい」「怒る」「怖い」、 あるいは、「母親」を含めて「子ども(と)遊ぶ」イメージが見いだされた。父親の母親観として「偉い」「大変」「拠り所」「一番・身近」「必要」という語彙群から母親中心の育児がイメージされており、父親の父親観として「家族/家庭」「仕事」「養う」「働く」「外」といった語彙から父親の子どもというより家族への責任が捉えらた。母親/父親の父親観/母親観のずれがみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内縦断データの分析については、ある程度分析および再分析を進め、著書(分担執筆)および学会発表として一定の成果を得た。海外ECEC実践についての文化横断研究については、昨年度論文が採択され一定の成果が得られているが、一方、新たな展開についてはコロナ後のフィールドの受け入れ(海外園)に困難がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、まずは国内縦断データの分析をさらに進め、論文を執筆する。また、同プロジェクトにおいて収集されている長期育児日記については、テキスト化を8割程度進めることができた。今後は、テキスト化を完了させたうえで、子育てのテーマの変遷について検討したい。 また、文化横断研究については、ECEC実践のフィールドである園との調整を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の年に研究の遂行が遅れ、次年度使用額が蓄積していたが、その残額が当該年度も影響した。また、年度末の支出の処理が翌年度になったものもあった。
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