研究課題/領域番号 |
21K03013
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
坂田 陽子 愛知淑徳大学, 心理学部, 教授 (00340349)
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研究分担者 |
田渕 恵 安田女子大学, 心理学部, 講師 (70631977)
三浦 麻子 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (30273569)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非認知能力 / 高齢期 / 非認知能力測定課題 / 生涯発達 |
研究実績の概要 |
本研究の総括的目的は高齢期の非認知能力の発達的変化の解明および測定課題,測定方法の確立であった。その中で2022年度は,前年度に作成した非認知能力測定の課題の再現性の立証とさらなる課題の作成,妥当性の検証,および,他の認知課題との独立性の検証を行うことが目的であった。 人もしくは記号を用いた計算課題を実施し,「解きやすさ」と「好み」とその理由について聴取した。加えてBig5について調査した。対象者は18歳から75歳までの成人約400名を対象とし,パネルサンプリングプロバイダーを用いてオンライン上で回答させた。大規模調査を同じ対象者に対して2回実施した。「解きやすさ」と「好み」のばらつきは,2021年度の結果の再現性を検証できた。調査1回目と2回目における「解きやすさ」と「好み」に中程度の一貫性を得た。さらに,1,2回目で一貫している群についてBig5との関連を検討したところ,「解きやすさ」の一貫性と神経症傾向との間に関連がみられた。一方,「好み」についてはBig5のどの項目に関しても関連が無かった。 さらに,算数の文章題について,数字のみの単純課題と人が登場する社会的文脈がある課題を作成し,さらに難易度を8段階にし,上記と同様の対象者に対して「解きやすさ」と「好み」について回答させた。その結果,同一回答者においても,課題の性質や難易度によって,「解きやすさ」と「好み」は変動することがわかった。今後は今回作成した課題をさらに精査し,「非認知能力測定課題」として,妥当性,信頼性の検証をする。さらに,高齢期の特徴を抽出する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に開発した課題の再現性,妥当性の検証はでき,Big5などの課題との関連性も検証できた。また新しい課題の考案,予備調査まで進んだ。オンライン調査ではのべ800人分のデータを収集できた。課題を改訂しつつ,安定した結果を得られるようになり,2022年度の大きな目的であった,非認知能力の測定課題の開発は進んだ。一方で,高齢期の特徴の抽出,高齢者に合った課題への改訂までは進んでいない。2023年度はコロナ禍が明けたため,対面での実験,調査も可能になると思われ,より進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は2022年度に開発した「非認知能力測定課題」をブラッシュアップするとともに,高齢期の特徴を若齢成人や幼児期と比較することでより鮮明に抽出する。そのうえで,高齢者に負荷をかけずに測定できる「非認知能力測定課題」を開発する。また開発された課題と他の能力との関連性や独立性を検証することに焦点を当てる。以下の3点を重点的に実行する(なお,2022年度と一部重複するが,2022年度ではコロナ禍により対面での調査ができなかったため,本年度に実施したい。)①非認知能力と他の認知能力(他者理解課題(比喩・皮肉テスト(MSST)等)および実行機能テスト(Stroop課題,Trail Making Test, 数字の逆唱等))との関連や独立性を検証する。②非認知能力と社会的関係性(心の理論課題,共感性尺度(IRI-J), 社会的スキル尺度(Kiss-18)等)との関連を検討する。③非認知能力の生涯発達的変化を検討するため,幼児を対象に非認知能力測定課題について対面実験を行い高齢者との比較を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度もコロナ感染症が蔓延し,高齢者や子どもに対する対面での実験実施が困難であったため,不足している対面データ収集を2023年度に実施する。主に実験者と参加者の1対1の対面による実験を多数実施予定。参加者への謝礼および,実験アルバイト費,また実施会場の会場費などに充てる。またデータがそろい次第,国際学会等への発表および論文投稿を進めるため,英文校閲費等の発表準備費に充てる。
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備考 |
商標登録出願中 商願2022-131956「脳の癖」 第16類
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