研究課題/領域番号 |
21K03015
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山本 博樹 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (30245188)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 説明文理解 / 構造方略 / 継続使用 / 学業達成 / 適性形成型支援 |
研究実績の概要 |
高校初年次生 (高1) の学業不振には教科書の説明文と読解方略との不調和が関わるとされるため,本研究は高1が読解方略の中でも構造方略をいかに「使い続ける」かに着目し,2つの仮説を導出した。仮説1は構造方略の継続使用が学業達成を規定する影響過程が存在するというものであり,仮説2は構造方略の継続使用の支援方策が学業達成を促進するというものである。仮説1の検証は研究1と2(令和3~4年度)で,仮説2の検証は研究3~5(令和5~7年度)で行う予定であった。 従って,令和5年度は研究2を実行した。つまり,説明文理解時の体制化過程の中で,適性形成型支援によって形成された構造方略がどのように継続的に使用され,学業成績の向上につながるのかという影響過程の解明を目的とした。 「進路多様校」の高1 (156人) について, 「支援前テスト」で「構造方略使用傾向尺度」を使って「3」点をカットオフポイントとして,媒介欠如群を反映する下位群 (87人) と産出欠如群を反映する上位群 (69人) を構成した。両群に対して5週間にわたる適性形成型支援を実施したところ,「支援後テスト」において媒介欠如群の中にはカットオフポイントの「3」を超えなかった者が55人おり,超えた者が32人いた。このため前者を媒介欠如群未達成群,後者を媒介欠如達成群と区分し,産出欠如群と併せた3群で以降の分析を続けた。 その結果,媒介欠如達成群では体制化過程の終盤である12期になると「支援前」から「支援後」にかけて構造同定率が高まることが示され,構造方略の継続使用が向上したと言える。また,説明文理解度や学業成績においても,媒介欠如達成群では「支援前」から「支援後」にかけて向上がみられたことから,適性形成型支援により媒介欠如達成群における構造方略の継続使用が促され,説明文理解や学業達成を促す結果になったと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の当初計画を概ね予定通り順調に実施することができた点で,上記の自己評価を付した。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで3年間は計画通り概ねに進んでいる。そこで令和6年度以降についても当初の計画を実施する方針をとりたい。 令和6年度について示すなら,産出欠如群は1学期に接続語注目方略をある程度形成しており,適性形成型支援だけでは効果は見込めない。そこで,令和5年度と同様に適性形成型支援を行った上で,処遇適合型支援を重ねて協働効果を図りたい。産出欠如群が説明文理解時の体制化過程を「通じて」接続語への注意を高めやすいように,接続語の直前にメタテキスト (字下げ) を付加し,接続語注目方略の使用を促す処遇適合型支援を併せて実施する。メタテキストは生徒の作業記憶に負担をかけないため (畠岡・中條, 2013),説明文理解時の体制化過程の後半でも活用が期待できる。令和5年度と同様に影響過程をモデル化し,メタテキスト(字下げ)が接続語注目方略の使用促進を介して構造方略の継続使用を向上させ,説明文理解と学業達成を促進する影響過程を多母集団同時分析で検証する。
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