研究課題/領域番号 |
21K03025
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
戸田 有一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70243376)
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研究分担者 |
金綱 知征 香川大学, 教育学部, 准教授 (50524518)
西野 泰代 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (40610530)
鶴田 利郎 国際医療福祉大学, 小田原保健医療学部, 講師 (20735352)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | いじめ / モニタリング / 教師のいじめ認知 / 自己効力感 |
研究実績の概要 |
本研究は、学校において教師が行ういじめ認知・対応をより確かにするため、教師のいじめ認知・対応における個人差にかかわらずいじめの深刻度をモニタリングできる、定期的な調査や通報アプリなどと連動するモニタリングアプリを開発することを主な目的としている。 研究1では、適時・最少の質問への教師などの回答動向をふまえ、管理職等に警告を伝える、教師のいじめ深刻度認知支援のためのモニタリングアプリを開発する。初年度は、奈良県内での「いじめモニタリングシステム」(教師視点)の第一段階の試行を経て、第二段階へのステップとすることができた。具体的には、奈良県いじめ対策連絡協議会のバックアップを得てシステムを設計し、奈良県立教育研究所の支援のもと、五條市のある小学校で試行した。12月に小学校で説明会を行い、1月にその学校用の「気付きの共有のためのフォーム」「見守りの記録のためのフォーム」を作成し、使用を開始していただいた。 研究2は、教師のいじめ認知・対応の「温度差」に関する国際比較研究を行うものである。まず、様々な国際学会などにオンライン参加することによって、いじめ対策研究の最新の動向をおさえ、文献研究を通して今後の展開を構想した。さらに、国内で研究者と実践者の知見を交流する「いじめ対策における教師の役割と志」と題した連続セミナーを3つの科研グループの共催で行った。2022年1月には『いじめの傍観者研究の国際比較:いじめの構造解明に向けて』『ネット活用を含むいじめ対策に関する教員の認識と日常の取り組みについて』、同2月には、『「火事のメタファー」を用いた「いじめ」理解:ことばの分析を通した実践の試み』『小・中・高等学校における「教員間いじめ」に関する調査報告:教員社会は子どもたちよりも「いじめ」が多いのか?』というテーマで、質の高い発表と議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、奈良県内での「いじめモニタリングシステム」の試行の第一段階を経て、第二段階の試行へのステップとすることができた。もともと、五條市の小学校では校内で週に1度で児童らの状況を共有していたので、その際の基礎資料作成用に使っていただいた。 また、様々な国際学会などにオンラインで参加することによって、いじめ対策研究の最新の動向をおさえ、今後の展開を構想することができた。また、国内での連続セミナーも2回開催できた。システム改善のためのデータとして何が必要なのかも検討することができ、以上のことから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究の推進方策に関しては、下記のように計画している。 1.「いじめモニタリングシステム」の第二段階の試行:昨年度の第一段階の試行実践(五條市にある小学校での実践)をうけ、今年度は別の基礎自治体の複数の学校での試行実践を行う。第一段階の試行においては、回答のフォームが学年ごとになっていたために、結果的にスプレッドシートも学年の枚数を確認しなくてはいけなくなっていた。そのため、ひとつのフォームで出力もひとつのスプレッドシートになるように改善を行ったが、その改善が学校ごとに工夫を要する可能性がある。令和4年度には、前年度と別の基礎自治体でも複数校で試行をする見通しがたった。試行を重ねつつ、活用自治体や学校をひろげ、個々の学校にカスタマイズした改善と、全体の統一感を両立させることが課題である。 2.教師のいじめ対応効力感尺度の開発:試行を行った自治体の学校や、このシステムを紹介する自治体の研修などで、教師のいじめ認知や対応への効力感に関する調査を実施し、効力感の自己評定やその際の判断に関する自由記述を、まずは、予備的に分析する。 3.国際的な共同:昨年度の「いじめ対策における教師の役割と志」連続セミナーを、国内から国際レベルに拡張して実施する。具体的には、海外大学のいじめ対策センターと鳴門教育大学いじめ防止支援機構の連携を構築し、共同でのオンラインセミナーを企画して運営する。 4.研究成果の論文・著書:まずは、国際的な場での発表を準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、アプリの初期段階の開発に必要と思われた費用が、グーグルフォームなどを利用することでかからなかった。また、奈良県立教育研究所等の協力を得ることで、試行にも費用がかからなかった。国際学会にも、コロナ禍のために参加することができず、次年度使用額が生じた。 翌年度分とこの額をあわせ、国際学会への参加や、可能であれば、海外の研究者の招聘も行いたいと考えている。
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