研究課題
本研究は,幼児期から児童期の子どもを対象に,「社会性の発達を左右する認知バイアスに関する心理学的研究」に着目し,その発達過程を実証的な研究によって検討していくものである。令和5年度は,新型コロナウイルスの世界的な感染による外務省および所属大学からの渡航禁止が解除され,出発が遅れていた科研費の国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))の助成によるイギリスでの共同研究のために,イギリスに渡航することができた。渡航期間は,2023年4月から2024年2月までであった。この期間は,本科研費による研究を中断していたため,令和5年度に進めることができたことはわずかであった。具体的には,私がこれまで行ってきた作為/不作為に関する知見を発展させるとともに,敵意帰属バイアスに関連する研究を行った結果を整理することができた。過去の心理学の研究から,たとえ行為者の意図や生じた結果が同じであっても,作為と不作為を比較すると,私たちは不作為の方を寛容に判断する傾向が繰り返し知られており,不作為バイアスとして知られている。これは,「何かをする/何もしない」という「行動の有無」に主として焦点を当てられた研究から明らかになっている。これに対して,敵意帰属バイアスは,認知バイアスの1つであり,相手の言動が敵対的によるものだと認識してしまう傾向を指すものとされる。本研究では,あらかじめ悪意を明示した場合とそうでない場合とで,その後の挑発行動の作為・不作為が意図解釈に違いがあるかを検討した。大まかな結果は,悪意のある不作為において敵意帰属傾向が見られ,相対的に作為より不作為の場面で敵意帰属が強い傾向が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまで実施してきた研究で,既に成果も見られていることから順調に進展していると判断した。
これまでの研究をさらに発展させ,社会性の発達について,当初の目的を達成したいと考えている。
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))の助成によるイギリスでの共同研究のために,渡航期間は本科研費による研究を中断していた。そのため,今年度はほとんど使用できなかったことによる。
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Journal of Experimental Child Psychology
巻: 242 ページ: 105886~105886
10.1016/j.jecp.2024.105886