本研究は,小学校における宿題の教育的効果の縦断的検討と宿題を用いた学習指導の提案である。先行研究では小学校においては,中学校および高等学校とは 異なり,宿題を行なう時間および頻度と成績の関連がほとんどないことが示されている。また,児童のストレスの増加など宿題を増やすことによるネガティヴな 影響も指摘されている。学業成績のみならず宿題で形成される学習習慣等も宿題の教育的効果と捉えることが可能であることに加えて,宿題と学業成績が学習習 慣等の変数を媒介して関連する可能性があり,その関連を時間を考慮した縦断研究によって検討する。 当該年度の研究は,最終年度である3年目の研究に該当し,小学校における宿題と習慣と成績(算数)の関連を検討した。調査では小学6年生を対象とした。1年目の調査時点では4年生,2年目の調査では5年生であり,当該年度の3年目の調査時点では6年生だった。分析では小学校2校における3度の調査における有効回答を用いた。4年生時,5年生時及び6年生時における1日あたりの宿題を行なう時間,習慣,1学期末の成績の関連を検討した。その結果,4年生時,5年生時,6年生時で宿題と成績の間に有意な正の相関はなかった。一方,4年生時,5年生時,6年生時で習慣と成績の間に有意な正の相関があった。また,4年生時の習慣と5年生時及び6年生時の成績の間および5年生時の習慣と6年生時の成績の間に有意な正の相関があった。4年生時,5年生時,6年生時における習慣と成績を用いて交差遅延パネルモデルを検討したところ,4年生時の習慣は5年生時の成績を予測し,5年生時の習慣は6年生時の成績を予測した。これらの知見をもとに,習慣形成に着目した宿題を用いた学習指導の提案を行なった。
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