将来目標とは「自分の人生全般(将来)において何を大切にして生きていきたいのかに関する個人の人生価値観」のことである。将来目標は動機づけに関する心理学の理論の一つである自己決定理論における重要な心理学的構成概念であり,子どもの将来目標を測定する尺度は、西村・村上・中山・鈴木・櫻井 (2017) によって開発されていた。しかしながら、子どもの将来目標に関する研究を継続していく上で、既存の尺度は項目数が多く、子どもへの心理的負担が懸念されていた。 そこで本年度は、まず将来目標尺度の項目数を厳選するための基礎的データを収集し、妥当性を担保したまま項目数を減らす作業を行うこととした。公立中学校に通う生徒363名に、将来目標尺度28項目と学校生活満足度尺度20項目から構成される調査用紙が配付され、最終的に333名から回答が得られた。 まず、因子分析の結果から、短縮版の項目が選定された。そして、短縮版に対して確認的因子分析を行った結果、十分な適合度が示された。また、学校生活満足度との関連に対しても、全項目版と短縮版で大きな違いはみられず、短縮版の妥当性が担保されていることが示された。 次に別サンプルとして公立小中学校約800名を対象に将来目標尺度の短縮版を実施した。分析の結果、小学校から中学校への学校移行に伴う将来目標の発達的変化が明らかにされた。また同時に取得した学校適応や健康に関する変数に対して、将来目標の中でも社会的貢献に重きを置く内発的将来目標が関連することが示され、理論的に想定されている結果が確認された。
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