研究課題/領域番号 |
21K03033
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
成本 忠正 東京福祉大学, 心理学部, 准教授 (60434560)
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研究分担者 |
松浦 直己 三重大学, 教育学部, 教授 (20452518)
麻生 奈央子 東京福祉大学, 心理学部, 講師 (10945893)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ADHD児 / 視空間ワーキングメモリ / 認知トレーニング / トレーニングの転移効果 |
研究実績の概要 |
問題解決や意思決定などの複雑な認知課題の達成には,ワーキングメモリ (心的表象の保持と操作を同時に遂行する能力) とこの働きを支える実行機能 (課題遂行の監視,無関連情報の抑制・注意のシフト・情報更新など) が重要な役割を担う。児童生徒のこれらの能力と学習成績の間には強い相関が認められている。数多くの研究結果により,注意欠如/多動性障害 (ADHD) を抱える児童生徒のワーキングメモリ能力と実行機能が定型発達児よりも弱く,学習成績の低さの主たる原因であると考えられている。本研究の目的は,実行機能ではなく,ワーキングメモリトレーニングによる教科学習成績への効果検証を行うことである。 本研究ではADHD児の視空間ワーキングメモリのトレーニング課題(パソコン上で操作)でこの能力を向上させる。その効果が教科学習(算数能力:計算問題,文章問題,図形問題)を高めることにつながるのかを検討する。ワーキングメモリトレーニング課題では「視覚表象に操作を加え,その操作結果を保持し,その保持している視覚表象にさらに操作を加える」という操作と保持の連続遂行を求める。2022年度では、予備実験を数回実行し,トレーニングソフトの修正を行った。また、このトレーニングの前後に実施する算数テストにおいても修正を繰り返した。 現在,埼玉県にある「キッザス放課後倶楽部」にて統制群(定型発達児)の継続的な募集およびトレーニングを行っている。数名のトレーニング及び事後テストを終了している。また,福井県にある「平谷子ども発達クリニック」にて実験群(ADHD児)の継続的な募集およびトレーニング開始の準備をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前々年度,前年度では新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により,認知(視空間ワーキングメモリ)トレーニング課題およびトレーニング前後に実施する事前・事後算数テストの確認(予備)実験に必要な参加児童を募集することが極めて困難であった。また,トレーニング実施場所である「平谷子ども発達クリニック」では必要最小限のスタッフのみが医療業務にあたっており,実施場所として協力していただくことが困難であった。このような事情により予定していたスケジュールに遅れが生じた。本年度より大規模な募集を再開したところである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に参加していただくADHD児グループおよび定型発達児グループの参加人数をそれぞれ20名から30名とする。埼玉県にある「キッザス放課後倶楽部」では主に定型発達児,福井県にある「平谷子ども発達クリニック」では主にADHD児を募集している。それぞれの場所において参加児童に対して①事前テスト,そして②事前テスト後に1か月間の認知トレーニング,③トレーニング後に事後テストを実施する。データが集まり次第,分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に予定していた人件費および旅費への支出がほとんどなかったことにより,次年度使用額が生じている。今後,特に①トレーニングソフト修正(難度調整およびエラーへの対応),②ADHD児のトレーニング実施場所である福井県の「平谷子ども発達クリニック」への出張(研究に関するスタッフとの打ち合わせ・参加募集・トレーニング実施),および研究成果報告のための国内および国際学会への出張に翌年度分として請求した助成金と併せて使用する。
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