研究課題/領域番号 |
21K03034
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
雨宮 有里 東洋大学, 現代社会総合研究所, 客員研究員 (00625501)
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研究分担者 |
尾崎 由佳 東洋大学, 社会学部, 教授 (50459434)
竹橋 洋毅 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (70583871)
高 史明 東洋大学, 社会学部, 准教授 (90594276)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マインドセット / セルフコントロール / 無力感 / 孤独感 / SNS依存 |
研究実績の概要 |
本研究では日常生活で経験する誘惑とそれに対する反応の実態を調べる。また、セルフコントロールの失敗による無力感を低減し、適切なセルフコントロールを促進する成長マインドセット介入の開発を行う。 2023年は3年目であり、研究の目的は1)セルフコントロールの困難がどのプロセスで無力感を生じさせているのか、2)それらを受けてセルフコントロールの失敗がどのような時系列的変化を示すかを明らかにすることであった。1)について、失敗の帰属先が無力感に与える要因を明らかにするために、自制心の成長マインドセットが自制失敗後の原因帰属と無力反応に及ぼす効果について検討がおこなわれた。その結果、自制心や知能のマインドセットが固定的である人ほど,自制の失敗が自分では変えがたい要因(特性)のせいであると帰属しやすかった。なお、自制心の成長マインドセットおよび自制失敗が無力感に与える影響は検出されなかった。この研究は、2022年にデータが収集され、2023年日本心理学会87回大会において発表された。 また、2)については、それをもたらす行動・状況として、セルフコントロールと孤独感、SNS依存の関係の検討がおこなわれた。研究①の結果、孤独感が高いと、SNS依存の一部である情緒的利用が高く、セルフコントロールの値が低いことが示された。この結果から、孤独感がSNS依存を介し、セルフコントロールを低下させるという因果モデルが考えられる。この結果を受け因果関係を明らかにするために研究②が行われた。その結果、セルフコントロールが高いと、孤独感が低く、孤独感が高いとSNS依存が高くなるという結果が得られた。これらの結果のうち、①は2023年日本心理学会で発表された。②については、2024年日本心理学会での発表が予定されている。また、最終的に得られた結果については、研究期間内の学術誌での公刊を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究責任者の体調不良のため、当初の予定であった1)セルフコントロールの困難がどのプロセスで無力感を生じさせているのか 2)それらを受けてセルフコントロールの失敗がどのような時系列的変化を示すかを経験サンプリング法を用いて明らかにするという研究は遅れている。 このうち、1)セルフコントロールの困難がどのプロセスで無力感を生じさせているのかについて、特性の与える要因を明らかにするために、自制心の成長マインドセットと自制失敗後の原因帰属,無力感に関する検討がおこなわれた。この研究は2022年にデータが収集され、2023年に日本心理学会で発表された。 また、2)セルフコントロールの失敗と無力感の関係について、そこで用いる行動・状況の検討として、孤独感がSNS依存を介してセルフコントロールに与える影響の検討がおこなわれた。この研究の一部は2023年日本心理学会にて発表された。研究結果は研究期間内の公刊を目指す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の目的であった1)セルフコントロールの困難がどのプロセスで無力感を生じさせているのか、2)それらを受けてセルフコントロールの失敗がどのような時系列的変化を示すかを明らかにするために、2024年度は経験サンプリング法を行い、データを収集する。なお、この研究目的のうち、1)セルフコントロールの困難がどのプロセスで無力感を生じさせているのかについては、セルフコントロールの失敗とその原因帰属先、無力感の関係を明らかにするために、2022年に自制失敗をどのように原因帰属するか,その結果、無力感がどのような影響を受けるかに関する検討が行われた。この結果は2023年日本心理学会で発表された。 また、2)セルフコントロールの失敗と無力感の関係については、それをもたらす行動・状況の検討として、孤独感がSNS依存を介してセルフコントロールに与える影響の検討がおこなわれた。この研究は、①質問紙による横断的調査と、②その結果を受け、因果関係の推定のための縦断的調査から構成される。研究①の結果は、2022年にデータが収集され、2023年の日本心理学会において発表された。研究①②を通じて得られた結果は、2024年日本心理学会にて発表予定であり、研究期間内の学術誌での公刊を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、1~3年目の研究計画として、葛藤の解消および行動抑制の困難と無力感について日常的実態と時系列的変化を明らかにするために、国内に居住する成人を対象とした縦断調査(経験サンプリング法)を実施する予定であった。また、分析成果を踏まえ、セルフコントロールの困難がどのプロセスで無力感を生じさせているのか、それらを受けてセルフコントロールの失敗がどのような時系列的変化を示すかを明らかにするため、縦断調査(経験サンプリング法)を計画していた。これらの目的の前提条件となる調査は行われたが、経験サンプリング法の実施に至らなかったため、その謝礼が未使用額となり、次年度使用額が生じた。
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