研究課題/領域番号 |
21K03045
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
梅垣 佑介 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (00736902)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / 反すう / うつ / 不安 / 介入研究 / ケース・シリーズ |
研究実績の概要 |
本研究課題は、反芻焦点化認知行動療法(RFCBT;Watkins, 2016)の我が国での実践を促進するため、(a)効果尺度の検討、(b)実践における課題の検討、(c)普及活動の促進を行うものである。 (a)に関しては、自己評定式の反芻尺度RRSで測定される反芻の我が国における特徴を明らかにするための調査研究を計画し、奈良女子大学研究倫理審査委員会より承認を得た。2022年度中に調査を実施予定である。 (b)に関しては、RFCBT自助プログラムを用いた多層ベースライン法によるケース・シリーズの介入を概ね終了し、現在フォローアップ・データの収集を行っている。同研究の分析結果の一部は、2022年度に国内のCBT関連の主要学会で発表予定である。また、同研究の前に実施した自助プログラム介入研究から得た質的データの再分析を行い、2021年7月に開催された7th Asian Cognitive Behavior Therapy Conferenceで発表した(Umegaki & Watkins, 2021)。この発表は、大会で最優秀の発表1件に授与されるBest Research Awardを受賞した。 さらに実践の幅を広げるため、協力先クリニックでうつ・不安患者を対象とした対面式RFCBTの実践を計画・開始した。介入計画をUMINに登録し、奈良女子大学研究倫理審査委員会から承認を得て、介入研究を開始した。結果は事例研究あるいはケース・シリーズの形で、学会発表・論文発表を行う予定である。 (c)に関しては、慶應義塾大学と共同でRFCBTマニュアル(Watkins, 2016)の翻訳作業を進めた。2022年度中の刊行を予定している。また、ガイド付きオンラインRFCBTの取り組みについて、第21回日本認知療法・認知行動療法学会大会企画シンポジウムで発表を行った(梅垣,2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a)効果尺度の検討に関しては、現実的な制約や先行研究の再レビューに基づき、当初想定していた計画とは異なる方法論を用いて我が国のサンプルを用いた測定時の反芻尺度の特徴(および我が国のサンプルにおける反芻思考の特徴)を明らかにする予定である。倫理委員会から承認が得られていることから、2022年度中には調査を実施できる予定である。 (b)実践に関しては、RFCBT自助プログラムを用いた多層ベースライン法によるケース・シリーズが概ね順調に進んでおり、現在はフォローアップ・データの収集を中心に行っているところである。それに加え、うつ・不安患者を対象とした対面式RFCBTの介入研究を新たに開始できたことで、我が国の臨床実践において反芻思考をいかに扱うかについて、示唆が得られる可能性が考えられる。 (c)に関しては、RFCBTマニュアル(Watkins, 2016)の翻訳作業が概ね計画通りに進んでいる。また、国内学会での講演依頼にも積極的に応じている。 以上のことから、本研究課題の現在までの進捗は概ね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(a)効果尺度の検討に関しては、自己評定式反芻尺度を検討した先行研究のレビューを引き続き行い、レビューの結果を踏まえて最終的な調査のデザインを確定させ、調査を実施する。現時点では、データ収集をオンライン調査会社に委託予定である。また、先行研究のレビューの結果から研究デザインに変更が生じる場合は、それに応じて研究倫理審査の変更申請を行う。いずれにしても、2022年度中の調査実施を計画している。 (b)実践に関しては、RFCBT自助プログラムを用いた多層ベースライン法によるケース・シリーズの途中分析結果を、2022年度の国内のCBT関連学会で発表予定である。また、分析結果の一部は2023年に韓国で開催予定の10th World Congress of Cognitive and Behavioral Therapiesでも発表を計画している。研究全体をまとめ、国内外の主要CBT関連雑誌に投稿することも計画している。 うつ・不安患者に対する対面式RFCBTについては、協力者のリクルートを引き続き行い、同意が得られた協力者を対象に介入を実施する。介入が終了した協力者については、適宜フォローアップを実施する。2022年度中も実践・データ収集に注力する予定であり、学会での発表や論文発表は2023年度以降になる見込みである。 (c)に関しては、RFCBTマニュアル(Watkins, 2016)の翻訳作業が終盤に差し掛かっており、共同研究者らとともに翻訳書刊行に向けた詰めの作業を進めている。また、国内外の学会・研究会からの講演依頼には積極的に応じる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始当初の計画では、2021年度中に効果尺度の検討を実施する予定であり、そのためのオンライン調査費を計上していたが、共同研究者の事情といった現実的な制約や先行研究の再レビューを受け、2021年度中に調査を実施することができなかった。そのために、次年度使用額が発生している。効果尺度の検討を行うために、2022年度中の調査実施を計画しており、そこで繰越額の多くを使用する計画である。
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