研究課題/領域番号 |
21K03053
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
山口 創 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 教授 (20288054)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 身体接触 / セルフタッチ / ストレス / 皮膚 / リラックス |
研究実績の概要 |
今年度はCOVID-19により実験状況に制約があっため、予定通りの参加人数に到達しなかったが、8名の参加者を対象に実験を行った。実験の目的は、①他者からのタッチとセルフタッチによるリラックス効果の違いについて明らかにすること、②皮膚に触れることにより、ストレス状態を把握できる可能性について明らかにすることの2点であった。触れる皮膚の部位はいずれの条件においても額と前腕の2箇所とし、触れ方は①ストレス状態を把握する条件では手の平で触れて動かして把握することとし、②リラックス効果の検討の条件では、手のひら全体で圧をかける方法(プレス)で行った。 皮膚の性状の測定は、客観的指標としては皮膚角質水分量測定器(SKICON-200)EX-USBを使用し、主観的指標としてはVASを用い、それらの相関関係を検討した。さらにリラックス効果の指標としては、心理尺度のPOMS-2、TDMS-STを用いた。 実験の結果、他者からのタッチは「混乱した」といった気分を喚起させるのに対し、セルフタッチは「リラックスした」気分を高めることがわかった。これらのことから、他者からタッチされるよりもセルフタッチの方がリラックス効果が高まることがわかった。 一方で皮膚の性状については、主観的指標と客観的指標の相関関係を検討した結果、角質水分量が低いほど、「すべすべした」(r=-0.47)、「弾力がある」(r=-0.60)、「温かい」(r=0.45)といった評価と相関関係があることがわかった。さらにPOMSの「抑うつ・不安」が高いほど「すべすべした」などの皮膚の主観的評価が高いこともわかった。これらの相関関係については、想定していた結果とは逆の関係にあることから、今後その原因についてさらに検討していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画においては、2021年度に行う予定として、実験計画の立案、倫理委員会の承認、皮膚の角質水分量の測定機器の選定と購入、20名に対して実験を完了させる予定であった。しかし本研究の内容が身体接触を伴うものであり、これは大学の研究指針としているCOVID-19による身体接触の制限に抵触するため、実験の延期を余儀なくされることとなった。そのため実際に実験を開始できたのが2021年11月となり、当初の予定より2ヶ月程度遅れることとなった。そのため実際の実験は8名の参加者にしか行うことができなかった。しかし8名の参加者を対象に実験ができたことから、そのデータを解析してある程度の傾向が把握できるため、それをもとに次の研究につなげる予定である。 全体として概観すると、2021年度の予定を基に比較すると、研究計画の立案から倫理審査を通す時期までは予定通り進めることができたため、「概ね予定通りに進んでいる」と評価された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、7月末までに当初予定していた実験参加者に達するまで実験を行い、完了させる。現況のCOVID-19の感染者数の減少を考慮すれば、7月末までに予定していた参加者数を確保することは十分に可能だと考える。さらに9月以降は、当初の予定通り、再度大学生を対象として、実験1のデータを分析し、「最もリラックス効果が大きい触れ方と触れる部位」「自らのストレス状態を把握できる触れ方と触れる部位」を抽出し、その仮定を検証するための実験(実験2)を行うこととする。 実験2は2022年7月に倫理委員会から実験の承諾を得ることとし、9月から開始する。20名の実験参加者を募集し、上記の方法で抽出された2種類の触れ方によるセルフタッチングを行ってもらい、その前後でストレス反応と皮膚の性状について測定する。この方法により、2種類のタッチングがリラックス効果と皮膚の性状把握効果があることを確かめ、次の実験3に繋げたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度にマルチ皮膚測定器一式を購入したが、まとめて購入したために業者から値引きをしてもらうことができたため、次年度使用額が生じることとなった。 2022年度においては、その金額を加算して、皮膚の測定以外の指標(例えば唾液による内分泌系の検査)を測定するための機器の購入に充当し、研究の幅を広げたいと考えている。
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