日常的にストレスが高い中高年の企業従事者を対象に、1ヶ月間継続してセルフタッチを行うことによる、日常の気分及びストレス反応及び、セルフコンパッションに与える影響について明らかにした。研究方法は、研究概要を説明し同意を得られた企業従業員を対象に、参加者には1ヶ月間、毎日就寝前に、10分間のセルフタッチの方法を紹介したweb上の動画を視聴しながらセルフタッチを行ってもらい、その前後でweb上でアンケートへの回答を依頼した。アンケートは、職業性ストレス簡易調査票とPOMS-2、セルフコンパッション尺度であった。 合計10回の実験に協力したデータ(N=21)を対象にt検定を行った。その結果、POMS-2の全ての因子について有意差が認められた。つまり「緊張」「抑うつ」「怒り」「混乱」「疲労」が有意に低減し、「活気」は有意に上昇した。このことから、セルフタッチングは、交感神経の高まりを鎮めると同時に、副交感神経を優位にして活気を高め、バランスの取れた覚醒水準にする効果があると推察される。 次に各回の介入前後で職業性ストレス簡易調査票を対象に分析した結果、「イライラ感」と「不安感」が有意に低下していた。さらに同様の分析を状態セルフコンパッション尺度を対象に行った結果、「自分への優しさ」と「マインドフルネス」の得点は有意に上昇し、「自己批判」「過剰同一化」は有意に低下した。 このことからセルフタッチングは、皮膚にやさしく触れることで「自分への優しさ」が高まり、そこに意識を向けることで「マインドフルネス」の状態が高まると言える。今回の実験で、気分やストレスだけでなく、セルフコンパッションを高める効果があることが認められたことから、自己や他者に対して慈愛の気持ちが高まり職場環境の改善に繋がることが期待される。
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