本研究においては、特に前頭葉機能(WCST、TMT、FAB、DEX)と介入効果(ディストラクション、活動ペーシング)の関連を検証することを目的としている。抑制制御と過活動の関連やセットの転換と注意シフトの困難さの関連を検証し、認知機能に応じた介入技法の選択の可能性やその効果についてのエビデンスを構築する。さらに、線維筋痛症は医学的検査などによる客観的な異常が検出されないことから自身も理解しがたい疾患であり、周囲への理解も得られにくい。痛みの客観的指標(PAIN VISION)を用いた心理教育を行うことによる疾患に対する受容(CPAQ-J)の変化を検討する。 2023年度は第49回日本認知・行動療法学会、第30回日本行動医学会において、その途中経過の一部について学会発表を行った。 2023年度末現在において、プログラム途中であったすべての参加者がフォローアップまで完了した。 本研究の成果として、痛みの客観的指標を用いた心理教育を行うことによる痛みに対する受容の変化については即時的な効果は認められなかった。しかし、プログラムを勧めていくことで痛みの受容の下位尺度(activity engagement)に有意な改善効果が認められた。また、本研究においても先行研究で報告されているFibro-Fogが認められた。DMSとディストラクションの効果、NUCAと活動ペーシングの効果について有意な相関が認められたが、今後症例を増やし検討していく必要がある。 これまで本邦で線維筋痛症の前頭葉機能に関する知見はほとんどなかったため、その知見を少数ではあるものの提示できた。
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