研究課題
基盤研究(C)
他者からの否定的評価を恐れ,人と接する場面を避ける社交不安者の注意の向け方,および記憶への影響について調べた。社交不安者は,目的に従ってある対象を見つけようとする際,本来の目的とは関係のない情報に注意を向ける傾向が強い。そのため,目的の対象を見逃してしまったり,正確に記憶することが困難であったりすることが明らかとなった。一方で,目的の対象以外の情報にも注意を向けているため,他の人よりも多くの情報を記憶していることが示された。
異常心理学
目的とは関係のない情報への注意は,目的を達成するためには邪魔な行為である。しかし,目的の対象だけ注意を向けることが有用であろうか。例えば,人前で話すときも,ある特定の人物にのみ注意を向けるより,様々な人物へ注意を向けたほうが状況をより正確に把握することが可能である。社交不安者は,将来生じる脅威に備え多くの情報を収集しているのではないか。社交不安者に見られる特徴は,不安を強める不適応的なものと考えられてきたが,個々の特徴には適応的意義のある可能性が示唆された。