研究課題/領域番号 |
21K03083
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
斉藤 環 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40521183)
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研究分担者 |
森田 展彰 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10251068)
笹原 信一朗 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10375496)
大谷 保和 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10399470)
大井 雄一 筑波大学, 医学医療系, 客員研究員 (90516056)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オープンダイアローグ / オンライン診療 / 対話実践 / 質問紙調査 / 半構造化インタビュー |
研究実績の概要 |
研究責任者のグループは、2015年から臨床現場でオープンダイアローグ(以下OD)と呼ばれる対話実践を行ってきたが、上述の理由から、コロナ禍でオンラインでの対話実践を行う機会が増えた。当初の予想以上に導入はスムーズで、クライアントの感想としても、「対面と変わらない、むしろ自宅でできるのがありがたい」といった反応が多く聞かれた。 ODとは、フィンランド・西ラップランド地方で980年代から開発と実践が続けられてきた精神病に対する統合的アプローチである。薬物治療や入院治療をほとんど行うことなく、きわめて良好な治療成績を上げており、近年国際的にも注目されつつある。 本研究の最終目的は、リモートによるOD実践の有効性を検討することであるが、これに先立ち、オンライン診療の問題点と利点を整理し、対話実践における「対面」の意義を評価すべく、オンラインで診療やカウンセリングを受けた経験のある成人300例を対象に調査会社に依頼して質問紙調査を実施した。その結果、オンライン診療は当初の予想以上に患者から支持されており、オンライン診療の継続を希望する者が48%にものぼることがわかった1)。 この結果に基づき、研究2では、ODの研修を受けた研究責任者と研究分担者によって2名のチームを作り、精神疾患の治療を受けている研究対象者に対話ミーティングを施行している。対話内容の解析と質問紙調査、および半構造化インタビューによって、対話実践の有効性と、リモートによる対話のメリットとデメリットについて検討を加える予定である。現在、5事例についてミーティングを継続しているが、研究1の実施が遅れたため、結果のまとめについては今後の課題となっている。
1)斎藤環:オンライン診療のニーズとリモート対話実践プログラム(RDP)の可能性. 家族療法研究39 (1), pp15-20, 2022
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で調査会社に依頼が殺到しており、申込みからアンケート実施までにかなりの時間を要したことの影響が大きかった。この影響で研究2の倫理審査の申請に時間を要し、研究協力者の患者も予想していたより集まらず、中断事例もあるなどして、現在5例を対象にミーティングを継続中である。8月までには全事例のミーティングを終了し、結果をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者および研究分担者が関わる複数の施設において、本プログラムの効果を検討す るためランダム化比較試験(RCT)を行う。研究協力に同意が得られた成人事例20-30例を、介 入群と非介入群に無作為に割り付け、介入群に対してはプログラムを1クール実施し、対照群は従来通りの個人精神療法を継続する。両群ともに治療的介入 前にベースラインデータを取得し、全例に対してVineland II 適応行動尺度による評価を行う。 介入開始後6か月後と12か月後に、本人と家族による自記式質問紙への記入と主治医による 評価にもとづいて、精神症状の評価を行う。プログラム終了後に、それぞれの評価項目につ いて統計的に比較検討を行い、プログラムの有効性を評価する。本研究の結果については 国内外の学会で報告し、報告書を作成する。すなわち、リモート治療プログラムの有効性とそれに関わる要因、プログラムの実施と普及可能性について、リモート対話実践から観た「対面」の意義についての検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究2の開始が遅れたこと、また参加を予定していた学会がオンライン開催になるなどして旅費が不要になったこと、研究2の遅れにより学会発表も遅れたことなどである。次年度は国際学会をはじめ多数の学会での発表を予定しており、旅費を含む学会準備で使用することが予定されている。
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