研究課題
近年、従来の精神疾患のカテゴリー的定義と分類よりもディメンション的スペクトラム・モデルが有力になりつつあるが、その心理アセスメントにおける有用性はなお未知数である。本研究では、精神病理症状の内在化-外在化スペクトラム・モデルに基づいて、複数の調査票を用いて臨床群と非臨床群の定量的分析を行い、従来のカテゴリー的臨床診断と比較検討することにより、精神疾患のスペクトラム・モデルの有用性と限界を明らかにすることを目的としている。2023年度においては、前年度に引き続き、解離症状に関するディメンション的構造(連続体モデル)を検証するために、解離体験尺度(DES)をはじめ一連の精神病理学症状評価尺度を用いて、若年層の一般人口集団1,000名余を対象にインターネット調査を行った。解離性体験に出来事要因と個人要因,及び両要因の相互作用が与える影響を検討した結果、過去に外傷体験歴が認められる場合は、外傷体験後に生じる否定的な認知が解離性体験の形成と維持に寄与することを明らかにした。これらの所見から、特に若年層の解離性体験が臨床群と連続する心理学的問題を有している可能性が示唆された。また、精神病理症状の連続体モデルであるHiTOPの内在化-外在化スペクトラム自記式調査票であるIDAS-II及びESI-BFの日本語版を開発し、その信頼性及び妥当性を検証した。以上の成果を総括して国際誌に発表した。一方、文献レビュー及び精神科医師と公認心理師を対象とする質的調査を行った結果、現在のところ、心理アセスメントにおけるディメンション的モデルの有用性にはなお限界があり、従来のカテゴリー的モデルとの併用が現実的であり、臨床家の多くは必ずしもディメンション的モデルへのパラダイムシフトを望んでいないと考えられた。
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Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy
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