研究課題/領域番号 |
21K03092
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山科 満 中央大学, 文学部, 教授 (40306957)
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研究分担者 |
高口 僚太朗 中央大学, ダイバーシティセンター, その他 (80824341)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 発達障害 / 大学生 / 支援一体型調査研究 / 面接調査 |
研究実績の概要 |
学内倫理審査委員会での承認を経た後、発達の特性を有する学生を対象に面接調査およびアンケート調査を開始した。コロナ感染症対策のため学内各組織が対応に追われ、学部所属のキャンパスソーシャルワーカーも支援業務が多く、研究協力学生を募ることがなかなか難しかった。そのため、面接調査は延べ15名で実施するに止まった。 研究協力学生の発達障害特性の程度は多様ながら、大半の学生は留年をしながら卒業の目処が立つ状況であった。子ども時代から診断がついている学生は少数で、多くは大学入学後に事例化していた。事例化する契機は多様で、英語は得意なのに第2外国語の単位が取得できずに1年生で留年を繰り返す、学部2年次以降にゼミで論文が書けず試験をクリアできない、人間関係で孤立し抑うつに陥る、就職活動で面接で落とされ続けて学生相談を訪れたのを機に特性に気づく、など多様であった。多くの学生はひとたび自身の特性に気づくと自己理解を進めていたが、自身の欠点ばかりに目が向くようになる、さらに障害特性を隠し「正常」に近づけようと一段と努力する、などといった「自己理解過程の陥穽」とも言うべき状況も一部で見られた。障害受容を一律に推し進めることの弊害が示唆されたといえる。 そのような中、キャンパスソーシャルワーカーとの関係が良好な学生は、学生生活を通して「伴走」してくれた支援者の存在意義を強調していた。 他方、発達障害ピアグループに参加している学生は、仲間と出会い、ここでの心理的サポートは他では得られないものであることを強調していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍が続き、対面授業が増えたとはいえ学生がキャンパスを訪れる機会は乏しく、研究協力を募ることが困難であった。また、協力学生をリクルートすることが期待されていたキャンパスソーシャルワーカーも多忙を極め、募集活動を十分に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
学内のキャンパスソーシャルワーカーに再度依頼し研究協力者を募ることとする。また、当事者によるピアグループを支援し、ピアグループ自体を研究対象とするとともに、ここからも研究協力を募る。 日本LD学会第31回大会自主シンポジウムに「大学における発達障害学生への伴走型支援の可能性と課題」として演題を応募し採択されたため、それに向けて事例の蓄積を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
全学的に学内業務が多忙を極め、学生と日々直接接して研究協力者を募るキャンパスソーシャルワーカーの研究協力が殊の外得られにくかった。このため、研究協力の謝金、および面接調査の逐語録作成のための謝金費用が、予定に比して少額に留まった。 2022年度は感染症の状況が改善しつつあるため、キャンパスソーシャルワーカーを通じて学生の研究協力を多く募っていく。また学内のピアグループを支援し、そちらからも研究協力を募っていく。
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