研究課題/領域番号 |
21K03092
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山科 満 中央大学, 文学部, 教授 (40306957)
|
研究分担者 |
高口 僚太朗 中央大学, ダイバーシティセンター, その他 (80824341)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 発達障害 / 大学生 / 自己理解 / 学修支援 / ピアサポート / 伴走型支援 |
研究実績の概要 |
2022年度は、前年に引き続き研究協力に同意した学生に対する面接調査、および学生ピアグループへの参与観察を行った。面接調査は中央大学多摩キャンパスでキャンパスソーシャルワーカーによる学修支援を受けている11人の学生に対して行い、逐語録を作成し、自己理解をキーワードに事例研究および修正版グラウンデッドアプローチによる質的分析を進めた。ここまでの成果を報告するために、日本ピアサポート学会および日本LD学会にて研究チームメンバーによる発表を行った。 中央大学のピアグループは、全て当事者により構成され、メンバーは当事者であり支援者でもある、という二重性を帯びている点が、健常学生が支援を担う多くの大学のピアグループ支援と異なる点であった。このグループは、守秘性の保持を運営上の最優先事項とすることで、グループに参加することで生じうる不利益を極力回避しようとしていた。グループの最大の目的は「後輩に自分と同じ悩みをさせない」ということであった。そのため、SNSを活用しながら就職活動や精神医学的知識に関する情報交換を積極的に行い、集会には必要に応じて精神科医を招いていた。メンバーはセルフモニタリングの重要性を認識し、その点に関する助言を精神科医から得ようとしていた。 当事者の語りの分析からは、学修プロセスに密着しつつも当事者の主体性を尊重する「伴走型」支援の重要性が浮かび上がった。学生の最大の関心事は単位取得・進級・卒業であり、その過程で生じる具体的な困難の背後にある課題を支援者が明確化・直面化し、学生が主体的に困難を克服する過程を通して、自己理解が深まっていた。自己理解が深まった後に薬物療法に導入するすることで一段と適応が改善し、そこからさらに自己理解が進むことも明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
面接調査を継続することにより、「当事者の視点に基づく」学修支援のポイントが具体的に明らかになったことは大きな成果であったといえる。この際、実際に支援を担当しているキャンパスソーシャルワーカーからの情報提供を受け、学生の発言の裏付けを取ったことも事例の理解や質的分析に大きく寄与したといえる。また、ピアサポートに関与することは研究チームとしては当初は想定していなかったが、ここに関与することでも当事者の苦悩や自己理解の実情について情報を得ることが出来たことも大きな意義があった。 ただし、当初計画に比べて面接調査の協力を得られた当事者学生の数が少なかったことと、アンケートを用いた量的研究を行う計画であったが準備段階に止まったため、次年度に挽回する必要があると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き当事者学生のインタビュー調査を継続する。既に協力を得ている学生に対しても継続的に面接調査を行い、経時的な変化を追う。協力を得た学生の支援者からの聞き取り調査も出来る限り加えていく。さらに支援を受けていて今春までに卒業した人に対しても面接調査を実施し、卒業後に大学生活を振り返って新たに気づいた点と、社会で新たに出会う障壁について言語化してもらい、学生支援に必要な情報を得る。 量的研究についても、複数の大学での調査用紙の配布を行い分析を行うこととする。 得られた成果は、日本LD学会をはじめ複数の学会で報告する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究協力の学生数が想定よりも少なかったことと、キャンパスソーシャルワーカーからの研究協力が無償で行われることとなったために、予算計上していた謝金の支払額が大きく減ったことによる。 研究協力の学生に対する謝金について、面接時間が想定よりも長い場合が多かったことから、謝金を増額することとした。また、他大の専門職との情報交換などのための出張旅費を計上することとする。 次年度より研究分担者2名を加えることとし、それに対する分担金にも次年度使用額の一部を充当する。
|