研究課題/領域番号 |
21K03095
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研究機関 | 白梅学園大学 |
研究代表者 |
福丸 由佳 白梅学園大学, 子ども学部, 教授 (10334567)
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研究分担者 |
野坂 祐子 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (20379324)
水島 栄 北里大学, 医療系研究科, 教授 (00790940)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 離婚 / トラウマインフォームドケア / 子ども / 親 / 家族支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、離婚を中心とする家族関係の移行期を経験する親・養育者支援を対象としたトラウマインフォームドケアの視点を包む、より包括的な支援プログラムの開発を行い、家族関係再構築に資することを目的としている。コロナ禍を経て対面とオンライン双方での実施が可能になる中で、初回は対面で行いつつ、各家庭の状況を鑑みオンライン実践も取り入れながら実践を行っている。 23年度は、別居親のグループ、同居親のグループの2クールを実施し、離婚時の心理教育と親子の関係構築に向けたペアレンティングプログラムの実践、およびトラウマインフォームドケアの視点を含めた内容が、親にとって意義あるサポートであることを見出した。特に、トラウマインフォームドケアの情報や、グループの凝集性にもとづいた自身に対する内省と、子どもの状況理解などにも変化が生じ得ることが事後のインタビュー調査から示され、その一部を発達心理学会で発表した。またこうしたトラウマインフォームドケアの視点を踏まえた家族支援に関する考え方をまとめたものが、家族心理学会年報に掲載された。 さらに、こうした関係性の移行期にトラウマインフォームドケアの考え方を踏まえることは、親・養育者にとどまらず支援者支援においても重要である。この観点から、乳児院におけるコンサルテーションや研修などの取り組みを通して、職員に向けた支援者支援を行った。特に乳児院は、さまざまな背景のある子どもの育ちの初期を支える機関として、養育やケアに力を注ぐ一方で、幼児期になると子どもは児童養護施設や里親家庭などへの移行や家庭復帰などの変化を経験する。これは職員にとっても大きな変化であり一種の喪失を経験せざるを得ない。こうした視点から、乳児院職員のコンサルテーションや研修を通した支援を行い、今後の課題について検討した。この結果については24年度後半の成果報告を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗がやや遅れている理由は、主に以下の2点による。 まず、離婚を経験した親のグループの実践において、同居、別居それぞれのグループ実践を行う必要があったこと、さらに混在した上でのグループを行う必要もあるなど、当初予定に比べ、より丁寧な実践を行っていることが挙げられる。これは同時に本研究のテーマに該当しうる対象へのアプローチがやや難しいこともあるが、今後は、信頼できる支援団体との協力をより強化することを通して改善しているところである。 二点目は、参加される方々の状況によって、経時的なデータをとることが容易でないことも指摘できる。実践には参加されても、事後の調査が戻ってこなかったりと、研究継続に支障が生じることがあるが、これについてはある程度致し方ない面もあり、できる限りの協力を得るように努力するようにしている。 最後に、昨年度は本務の状況(学内執行部の役職にかかわる業務)により、研究時間確保が特に困難な状況だったため、結果として、共同研究者間の協議、実践と研究に注力しにくかった面があった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き実践と調査研究を行っていくが、まず上記の事情から離婚を経験した親グループの中でも、同居と別居の混成グループを対象に実践を行っていく。特に、トラウマインフォームドケアについて盛り込む内容を検討するなど、共同研究者間の打ち合わせもできる限り多く行っている。最終年度にあたる2024年度は、混成グループでの実践と前後の調査を行う予定である。その上で、再婚家庭に対する実践を行えるかどうかを検討していく予定である。 また、支援者支援については昨年度に引き続き、北海道地区の乳児院における実践を予定している。2年目にあたる24年度は、施設職員に向けた研修やコンサルテーションの効果について調査を行い、実効性と持続性のある支援プログラムを検討していきたいと考えている。 以上の取り組みから得られた成果については、まず離婚を経験した親へのグループ実践の結果について、7月の国際学会と12月の国内学会で発表予定である。また、得られた知見を基に、トラウマインフォームドケアの取り組みの可能性と課題について、8月に国内の学会で発表する予定である。 専門家に対する支援者支援の知見については、夏に予定されている2度目の実践を経て、25年3月に開催予定の国内学会で発表する方向で検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画よりも進捗が遅れており、成果発表を行う機会である学会出張が少なかったこと、謝金や人件費もあまり生じていなかったことなどが主な理由である。 24年度は、23年度中に既に行った実践結果をまとめた成果報告の機会が増えるため、学会出張、発表にかかわる費用が増える。また、支援業務のための出張も増える。さらに引き続き、研究実践も行うため、謝金、人件費なども増える見込みである。
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