研究課題
本研究は、日本で1年以上暮らす日本国外にルーツを持つ人たちを対象とし、日常生活やその中で経験する不当な扱い、心身の健康について調査を行い、アイデンティティの交差性、被差別経験や社会的排除の経験、精神的健康を総合的に検討し明らかにすることで、多様な背景を持つ人たちが暮らしやすい社会システム基盤の構築に資することを目的とした。12名の日本国外にルーツを持つたちを対象として半構造化面接を行った。来日の経緯や1日の様子、日本に来てから経験した出来事の中で印象に残っているものやストレスを感じたこと、同僚や家族や地域の人たちとの関係性等について質問し、インタビューデータは全て書き起こして、主題分析を使ってテーマを抽出した。その結果、言語やライフイベントによるストレス、支援資源がないこととあること、安全性、キャリア、コミュニティ、友人や家族との関係、母国と日本との比較、日本人からの差別的な言動、他の外国人からの差別的な言動、「外国人」であることの利益と不利益、自己の定義等、多様なテーマが語られた。多様な語りの中でも共通してみられたことは、自己や現状が相対性の中に存在すること、支援資源が関係性の中に存在すること、そして、多くの物事や経験には表裏が存在することであった。生活の基盤が母国から日本に移り生活を成り立たせていく過程で絶対的なものは比較的少なくなり相対的に物事を捉えるようになる様子が伺える。また、支援資源が関係性の中に存在することから、日本国外にルーツを持つ人たちへの支援資源は職場やコミュニティなど当事者が関係性を築きやすい場所に届ける必要性があるといえる。さらに、心の健康を促進するには、良い点や悪い点のどちらかに焦点を当てるのではなく、調和をとることの重要性がうかがえる。今後は、これらの示唆を元にして、多様な人たちが健康に暮らせるための社会システムの構築を検討していく必要がある。
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Global-Local Studies
巻: 17 ページ: 11-21
異文化コミュニケーション/Journal of Intercultural Communication
巻: 27 ページ: 1-37